くそ)” の例文
天照らす大神が田を作つておられたその田のあぜこわしたりみぞめたりし、また食事をなさる御殿にくそをし散らしました。
兜町かぶとちょうの裏にまだ犬のくそがあろうという横町の貧乏床で、稲荷いなりの紋三郎てッて、これがね、仕事をなまけるのと、飲むことを教えた愛吉の親方でさ。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もう迚も此処こゝうちには居られぬ、といって今更何処どこといってく処も無い新五郎、エヽ毒喰わば皿までねぶれ、もう是までというので、くそやけになる。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
立ち寄れば、牛のくそまじりの土墻どべいに、誰のいたずらか“李白りはく泥酔ノ図”といったような釘描くぎがきの落書がしてある。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まだこの世界せけえ金銭かねが落ちてる、大層くさくどこへ行っても金金とぬかしゃあがってピリついてるが、おれの眼で見りゃあいんくそより金はたくさんにころがってらア。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
『日本紀』五に彦国葺ひこくにぶく武埴安彦たけはにやすびこを射殺した時、賊軍怖れ走ってくそはかまより漏らしよろいを脱いで逃げたから、甲を脱いだ処を伽和羅かわらといい、屎一件の処を屎褌くそばかまという。
「勝ちさびに天照大御神あまてらすおおみかみ営田みつくだはなみぞめ、また大嘗おおにえきこしめす殿にくそまり散らしき」
神話と地球物理学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そして、この世の戦いに力は尽き矢は折れてもなおも屈せずに最後の抵抗を試みようとするかのように、自分で自分のくそをつかんでいて、それを格子の内から投げてよこした。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
からたちのうばら刈りそけ倉建てむくそ遠くまれ櫛造る刀自
万葉集巻十六 (旧字旧仮名) / 正岡子規(著)
くそのようなのは酒に醉つてらすとてこんなになつたのでしよう。それから田の畔を毀し溝を埋めたのは地面を惜しまれてこのようになされたのです」
犬のくそを踏み腹立つのみ。
神社合祀に関する意見 (新字新仮名) / 南方熊楠(著)
その嘔吐へどでできた神の名はカナヤマ彦の神とカナヤマ姫の神、くそでできた神の名はハニヤス彦の神とハニヤス姫の神、小便でできた神の名はミツハノメの神とワクムスビの神です。
かれその軍、悉に破れて逃げあらけぬ。ここにその逃ぐる軍を追ひめて、久須婆くすばわたり一一に到りし時に、みな迫めらえたしなみて、くそ出でて、はかまに懸かりき。かれ其地そこに名づけて屎褌くそはかまといふ。
くそなすはひて吐き散らすとこそ我が汝兄なせの命かくしつれ。また田の離ち溝むは、ところあたらしとこそ我が汝兄なせの命かくしつれ」と詔り直したまへども、なほそのあらぶるわざ止まずてうたてあり。
次にくそに成りませる神の名は、波邇夜須毘古はにやすびこの神。次に波邇夜須毘賣はにやすびめの神一一。次に尿ゆまりに成りませる神の名は彌都波能賣みつはのめの神一二。次に和久産巣日わくむすびの神一三。この神の子は豐宇氣毘賣とようけびめの神一四といふ。