まが)” の例文
古書こしよ渋海しぶみ新浮海しぶみとも見えたり。此川まがくねり、広狭ひろせまい言ひつくすべからず。冬は一面に氷りとぢてその上に雪つもりたる所平地のごとし。
トラックを急がせて、会社近くのまがり角へ来たとき、不意に横合から、五六人の男が、運転手台へ飛びかかった。
(新字新仮名) / 徳永直(著)
善吉は足早に吉里の後を追うて、梯子の中段で追いついたが、吉里は見返りもしないで下湯場しもゆばの方へまがッた。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
道中自慢であつた父も、その時は既に六十四五歳になつて居り、四十歳ごろから腰がまがつて、西国さいこくの旅に出るあたりは板に紙を張りそれを腹に当てて歩いてゐた。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
用人の足尾喜内、少しまがった腰を延して、娘を縛った青竹の後ろを、竹刀しないで力任せに引っ叩きます。
私共わたしどもに取つてたのしみは御座んせんのね、之を思ふと私などはくまア腰がまがつて仕舞はないと感心致しますの——いゝエ、此頃は、もう、ネ、老い込んで仕様しやうがありませんの
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
見ると右の手の親指がキュッと内の方へまがっている、やがてみんなして、ようやくに蘇生をさしたそうだが、こんな恐ろしい目には始めて出会ったと物語って、あとでいうには、これは決して怨霊とか
因果 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
昨日着いた時から、火傷やけどか何かで左手ひだりの指が皆内側にまがつた宿のかかあ待遇振もてなしぶりが、案外親切だつたもんだから、松太郎は理由わけもなく此村が気に入つて、一つ此地ここで伝道して見ようかと思つてゐたのだ。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ひよろ高いまがつた身體からだしてテク/\上つて行くのであつた。
子をつれて (旧字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
四五人のスキャップを雇い込んで、××町の交番横に、トラックを待たせておいて、モ一人のうちへ行こうと、まがった路次ろじで、フト、二人の少年工を発見みつけ出したのだ。
(新字新仮名) / 徳永直(著)
父は大正十二年に七十三歳で歿ぼっしたから、逆算してみるに明治二十九年にはまだ四十六歳のさかりである。しかし父は若い時分ひどく働いたためもう腰がまがっていた。
三筋町界隈 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
ひょろ高いまがった身体してテク/\上って行くのであった。
子をつれて (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
明治二十九年に丁度僕が十五になつたので、父は湯殿ゆどの山の初詣はつまうでに連れて行つた。その時父は四十五六であつただらうから現在の僕ぐらゐの年であるがもう腰がまがつてゐた。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)