さゝ)” の例文
文運かの如く開け、且つ古の律法おきてをたてしアテーネもラチェデーモナも、汝にくらぶればたゞさゝやかなる治國の道を示せるのみ 一三九—
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
其處に來れば人生のさゝやかな流は皆白く碎ける水泡やどう/\と鳴る音や渦卷や奔流の只中に碎け散つてしまふのです。
其庵の側に一つのさゝやかなる新塚あり、主が名は言はで、此の里人は只〻戀塚こひづか々々と呼びなせり。此の戀塚のいはれに就きて、とも哀れなる物語のさふらふなり
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
さゝやかな酒宴などひらいてゐるが、その座敷や臺所で、かひがひしくも立ち働いてゐる安兵衞の新妻や彌兵衞老人の妻は、いかにも良人の大事を理解しきつてゐる姿である。
折々の記 (旧字旧仮名) / 吉川英治(著)
梧桐の影深く四方竹の色ゆかしく茂れるところなどめぐめぐり過ぎて、さゝやかなる折戸を入れば、花も此といふはなき小庭の唯ものさびて、有楽形うらくがたの燈籠に松の落葉の散りかゝり
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
町立病院ちやうりつびやうゐんにはうち牛蒡ごばう蕁草いらぐさ野麻のあさなどのむらがしげつてるあたりに、さゝやかなる別室べつしつの一むねがある。屋根やねのブリキいたびて、烟突えんとつなかばこはれ、玄關げんくわん階段かいだん紛堊しつくひがれて、ちて、雜草ざつさうさへのび/\と。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ひと日わが心の郊外にさゝやかなる祭ありき。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
汝の叫びの爲す所あたかもいと高き巓をいと強くうつ風の如し、是あにほまれのたゞさゝやかなるあかしならんや 一三三—一三五
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
まづさゝやかなるさいはひを味ひてこれに欺かれ、導者かくつわその愛を枉げずば即ち馳せてこれを追ふ 九一—九三
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)