小猿こざる)” の例文
と竹童はその手紙を、一ぴき小猿こざるにくわえさせて、むちで僧正谷の方角ほうがくをさすと、さるは心得たようにいっさんにとんでいく。そのあとで
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
するとほか小猿こざるが「おれの父様ちやんはもつとえらいや、おにしま征伐せいばつにいつたんだもの」「うそだあ、ありやむかしことぢやないか」
早行べき所もなくかねて兄弟分の小猿こざるにも借金百兩ばかりも出來此上如何ともいたし方なき折から此度大岡樣の御手に召捕めしとられし所小猿が工夫くふうにて岡引衆を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
顔蔽いせる者 小猿こざるの知識でな。ものの周囲をまわるけれど決してものの中核にはいらない知識でな。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
彼女は無関心にマリユスをながめた。あたかもシコモルの木の下を走る小猿こざるをでも見るがようで、またはベンチの上に影を投げてる大理石の水盤をでも見るがようだった。
私たちは鳥類や、金魚や、一匹の立派な犬や、うさぎや、一匹の小猿こざるや、一匹の猫などを飼った。
黒猫 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
小猿こざるが二匹向かい合ってのみをとり合ったりけんかをしたりするのが、どうしても本物としか思われないのに、それはやはりただなんの仕掛けもない二つの手の影法師に過ぎないのである。
映画時代 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
彼が彼らを知ったのは、彼らの思想の漫画を通じてであった。芸術上の小猿こざるや新聞雑誌を渡り歩く小僧などによって、まねられ誇張せられた彼らの欠点をしか、彼は見なかったのである。
うけたまはり居るなりとはなしけるに三吉は大によろこび然らば翌日あすにも直樣すぐさま本郷へ行んといふを小猿こざるきゝてとてものことに百兩ばかりも誣頼ねだり夫にて取付商賣を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ぴき小猿こざるが「おれのお父様とつちあんはおまへえらいんだぜ、うさぎ喧嘩けんくわをしてつたよ」とひました。
廂うらの垂木たるきをガリガリとはしってきた小猿こざるが、咲耶子のかたにとびついて手をやるとまた足もとへとび、おそろしくなにかに恐怖きょうふしたらしく、彼女のまわりをグルグルまわりだした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
室のまんなかには、大理石の台の上に、ひげをはやしたブラームスの胸像がおごそかに控えていた。そしてピアノの上には、絹綿ビロードの小猿こざる方舞コチョンの記念品とが、糸の先にぶらさがっていた。
きょうも棒切ぼうきれを手にもって、友だち小猿こざるを二、三十ぴきつれ、僧正谷そうじょうがたにから、百足虫腹むかでばら嶮岨けんそをつたい、鞍馬くらま大深林だいしんりんをあそびまわっているのは、果心居士かしんこじ童弟子わらべでし、いがぐりあたまの竹童ちくどうであった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
流し大岡殿の仁心じんしんを感じけり又大岡殿には其中ににせ役人をせし盜賊たうぞくを吟味せんと所々探索たんさくを申付られけり扨又彼の雲切仁左衞門肥前の小猿こざる向ふ見ずの三吉の三人はにせ役人となりて原澤村の名主なぬし始めを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)