小字こあざ)” の例文
太古たいこ遺跡ゐせき發掘はつくつに、はじめてくだしたのは、武藏むさし權現臺ごんげんだいである。それは品川しながはたくからきはめてちかい、荏原郡えばらぐん大井おほゐ小字こあざこと
現にこの狩集村は、今も阿蘇郡古城こじょう村大字手野字尾籠おご小字こあざとなって存在する。人の集合する所をたまりということは普通の例である。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
利章の父栗山利安は、素播磨もとはりまの赤松氏の支流で、小字こあざは善助、中ごろ四郎右衞門と稱し、後に備後と名告つた。
栗山大膳 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
白望しろみの山続きに離森はなれもりと云う所あり。その小字こあざに長者屋敷と云うは、全く無人ぶじんの境なり。ここきて炭を焼く者ありき。或夜あるよその小屋の垂菰たれこもをかかげて、内をうかがう者を見たり。
遠野の奇聞 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
都に留まるよりも好んで片田舎に杖を止めた上人のこと故、その足跡の調査はしばしば困難を加えました。町や村ではなく、名も知れぬ小字こあざを地図の上に見出すのに多くの時を要しました。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
発戸ほっとの右に下村君しもむらぎみつつみ名村なむらなどという小字こあざがあった、藁葺屋根わらぶきやねあしたの星のように散らばっているが、ここでは利根川は少し北にかたよって流れているので、土手に行くまでにかなりある。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
結婚届に印を押してくれと云ふことだつたから、良人をつとの名や生月せいげつを書いて印を押した。原籍地には大字おほあざから小字こあざまであるのであるから私が覚えて居る筈もない。書附かきつけを見ながら書いたのである。
六日間:(日記) (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
高品さんの本家は十台島という小字こあざにある深い樹立に囲まれた、一町四方もあるような邸宅で、なんでも先祖は浦粕町の開拓者だそうであるが、——高品家の長男であり、私の知人である柾三まさぞう氏は
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
今もなお諸所に小字こあざを牛捨場または馬捨場と称する所がある。
牛捨場馬捨場 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
小字こあざよりさらに小さき区域の地名は、持主にあらざればこれを知らず。古き売買譲与の証文には常に見ゆるところなり。
遠野物語 (新字旧仮名) / 柳田国男(著)
あちこち迷った末に、翁の選択はとうとう手近い川添かわぞえの娘に落ちた。川添家は同じ清武村の大字おおあざ今泉、小字こあざ岡にある翁の夫人の里方で、そこに仲平の従妹いとこが二人ある。
安井夫人 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
高品さんの本家は十台島という小字こあざにある深い樹立こだちに囲まれた、一町四方もあるような邸宅で、なんでも先祖は浦粕うらかす町の開拓者だそうであるが、——高品家の長男であり、私の知人である柾三まさぞう氏は
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
これを土地によっては小字こあざと呼び、あるいは別に本来の小字のあった所では、かりに中字ちゅうあざなどといっているのである。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
小字こあざよりさらに小さき区域の地名は持主にあらざればこれを知らず。古き売買譲与の証文には常に見ゆる所なり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
名古屋附近に一女子いちにょし二女子ににょしなどという小字こあざのあるのは、女が名主になった証拠であります。
名字の話 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
三四 白望の山続きに離森はなれもりというところあり。その小字こあざに長者屋敷というは、全く無人の境なり。ここに行きて炭を焼く者ありき。或る夜その小屋の垂菰たれごもをかかげて、内をうかがう者を見たり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
石器土器の出るところ山口に二ヶ所あり。他の一は小字こあざをホウリョウという。ここの土器と蓮台野の土器とは様式全然ことなり。後者のは技巧いささかもなく、ホウリョウのは模様もようなどもたくみなり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
これをさらに分割して小字こあざと呼んでいた地方も多いが、その字なり小字なりの下に、なお二三筆の田や畠を一括してそれぞれの名があった。今では所有主とその近親のみが知っている地名である。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)