-
トップ
>
-
小包
>
-
こづゝ
立かけし
傘のころころと
轉がり
出るを、いま/\しい
奴めと
腹立たしげにいひて、
取止めんと
手を
延ばすに、
膝へ
乘せて
置きし
小包み
意久地もなく
落ちて、
風呂敷は
泥に
と
母親よりの
言ひつけを、
何も
嫌やとは
言ひ
切られぬ
温順しさに、
唯はい/\と
小包みを
抱へて、
鼠小倉の
緒のすがりし
朴木齒の
下駄ひた/\と、
信如は
雨傘さしかざして
出ぬ。
此下駄で
田町まで
行く
事かと
今さら
難義は
思へども
詮方なくて
立上る
信如、
小包みを
横に二タ
足ばかり
此門をはなれるにも、
友仙の
紅葉目に
殘りて、
捨てゝ
過ぐるにしのび
難く
心殘りして
見返れば