寿いのち)” の例文
旧字:
思邈しばくいはく。八九月に多く食へば、春にいたりて眼を病む。寿いのちを損じ筋力を減らす。妊婦はらみをんなこれを食へばその子六指むつゆびならしむ』
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
あの気違さんぢやどんなに寿いのちちぢめたか知れはしません。もうこれきり来なくなるやうに天尊様へお願ひ申しませう。はい、戴きませう。御酒ごしゆもおいしいものですね。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
それがために命をつないでいる者が多いといって、さっき県神けんじんから本司に上申してきたから、府君に呈したが、もう天庭に奏文して、寿いのち三紀みまわり延べて、禄を万鐘賜うた
富貴発跡司志 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
既にこれを手長という事から、御世の長きを祈り、寿いのちの長きを祝う詞に、往々この語を用いた。
手長と足長:土蜘蛛研究 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
おのれ善をなして、おのれそのむくひの来るを待つはなほきこころにもあらずかし。又悪業あくごふ慳貪けんどんの人のさかふるのみかは、寿いのちめでたくそのをはりをよくするは、一〇四我にことなることわりあり。
常世島とこよしま国なし建てて、到り住み聞き見る人は、万世よろずよ寿いのちを延べつ、故事ふることに言ひつぎ来る、澄江すみのえの淵に釣せし、きみの民浦島の子が、あまに釣られ来りて、紫の雲たなびきて、時のまにゐて飛び行きて
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
わが寿いのち
老境 (新字旧仮名) / 河井酔茗(著)
「万代に見とも飽かめやみ吉野のたぎつ河内の大宮どころ」(巻六・九二一)、「皆人の寿いのちわれもみ吉野の滝の床磐とこはの常ならぬかも」(同・九二二)の二首とも比較することが出来る。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
一四九りようして太虚みそらのぼり、地中ちちゆうをわすれたるならずや。秀吉竜と化したれども一五〇蛟蜃かうしんたぐひなり。一五一蛟蜃の竜と化したるは、寿いのちわづかに三歳みとせを過ぎずと。これもはた後なからんか。