みの)” の例文
新字:
布子一枚で其の冷たい風に慄へもしない文吾は、みのつた稻がお辭儀してゐる田圃の間を、白い煙の立ちのぼる隣り村へと行くのである。
石川五右衛門の生立 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
恐らくその爭鬪さうとう一生いつしやう續きませう。けれども秋々あき/\みのりは、かならず何ものかを私にもたらしてくれるものとしんじてゐます。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
やがてみのころよ。——就中なかんづくみなみ納戸なんど濡縁ぬれえん籬際かきぎはには、見事みごと巴旦杏はたんきやうがあつて、おほきなひ、いろといひ、えんなる波斯ペルシヤをんな爛熟らんじゆくした裸身らしんごとくにかをつてつた。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
花にほひ、みのるを見むと——
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
田圃たんぼの中の稻の穗の柔かにみのつたのを一莖ひとくき拔き取つて、まだ青いもみむと、白い汁が甘く舌の尖端さきに附いた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
あやまたずみのりはせむに
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
みのつた四邊あたり一面の稻田いなだが菜の花の畑であつたならば、さうして、この路傍みちばたの柳にまじつて櫻の花が眞盛まさかりであつたならばと、小池は芝居のりのあざやかな景色を考へ出してゐた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
みのらざる、何の紀念かたみ
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
小池のこしらへる麥笛を奪ひ取つたことや、秋の頃二人で田圃道たんぼみちを歩いて、小池が稻の穗の重さうにれてみのつたのを拔き取り、もみを噛んでは白い汁を吐き出すのを眞似まねして、お光も稻の穗を拔き
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
わびしくみのる殼の種子たね
独絃哀歌 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)