宮居みやい)” の例文
宮居みやいのあとはみなせ川であろうとおもわれる川にかかっている橋をこえてそれからまたすこし行ったあたりの街道からひだりへ折れたところにあった。
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
はじめて心付くと、先刻さっきながめた城に対して、稜威みいずは高し、宮居みやいの屋根。雲に連なるいらかの棟は、玉を刻んだ峰である。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今とて一天万乗の君と仰がれて九重ここのえ宮居みやいし給うお方が、御謀反とは、たれへたいしての御謀反なのか。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
星は何というすばらしい三角形の頂点であることか! 宇宙のいくつもの宮居みやいの、何という遠い
されどこの宮居みやいに慣れたるまらうどたちは、こよひこれに心留むべくもあらねば、前座敷にゆきかふ人のをりをり見ゆるのみにて、足をとどむるものほとほとなかりき。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
マホメには善良な点がある。天女の宮居みやい宦女かんじょの楽園を発明した者に敬意を表すべしである。牝鶏小屋めんどりごやで飾られてる唯一の宗教たるマホメット教に、敬意を表しようではないか。
かしこくも日本一の神様の宮居みやいをその土地に持った伊勢人は、日本中の人間を膝下ひざもとに引きつける特権を与えられたと同じことで、その余徳のうるおいはけだ莫大ばくだいなもので、伊勢は津で持つというけれども
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
バㇵラームが酒盃を手にした宮居みやい
ルバイヤート (新字新仮名) / オマル・ハイヤーム(著)
高光る 日嗣ひつぎ皇子みこ 厩戸うまやどの ひじりおほぎみ けはし世に れましまして はらからと たのおみらが 由々しくも 惑へるなかに いかさまに 嘆きませるか かしこくも 斑鳩の里 うち日さす 宮居みやいさだめて 飛ぶ鳥の 明日香あすかのみ代ゆ あかつきの 道うちひらくと 夢殿に ひとりこもらせ 夕されば のりのきはみを
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
むかし楠木正行くすのきまさつらが吉野の宮居みやい弁之内侍べんのないじたまわるとのちょくを拝辞してんだという和歌である。時と人こそちがえ、人々は幸右衛門の心根を充分にみとることができた。
玉楼金殿ぎょくろうきんでんを空想して、鳳凰ほうおうの舞うたつ宮居みやいに、牡丹ぼたんに遊ぶ麒麟きりんを見ながら、獅子王ししおうの座に朝日影さす、桜の花をふすまとして、明月めいげつの如き真珠を枕に、勿体もったいなや、御添臥おんそいぶしを夢見るかも知れぬ。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ありし日の宮居みやいの場所でる男が
ルバイヤート (新字新仮名) / オマル・ハイヤーム(著)
新帝(光厳天皇)の宮居みやいもあやうくみえたほどなので、後堀川ごほりかわの大納言、三条の源大納言、鷲ノ尾中納言、坊城の宰相さいしょうら、おびただしい月卿雲客げっけいうんかくのあわてふためきが、主上をみくるまにお乗せして
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
皇子の御在所も、親王家の宮居みやいも、ありやなしやの状態だった。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ごッた返しの宮居みやいを描いていたのであった。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)