夜食やしよく)” の例文
夜食やしよくぜんで「あゝあ、なんだいれは?」給仕きふじてくれた島田髷しまだまげ女中ねえさんが、「なまづですの。」なまづ魚軒さしみつめたい綿屑わたくづ頬張ほゝばつた。勿論もちろん宿錢やどせんやすい。いや、あつものはず、なまづいた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そろへて申すにぞ傳吉も佛前へそなへ夫より夜食やしよくすみて傳吉は今こそ我家へ立ち歸りしゆゑこゝろ落付おちつ草臥くたびれ出しにやこくり/\と居眠ゐねぶりけるを叔母は見るより傳吉どのもさぞつかれしならんお梅やとこ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
けふの夜食やしよくやきパンにジヤムと牛乳ミルクはんとぞ思ふ。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
星が浦銀のうつはのはこばれし夜食やしよくの卓にひびく浪音
立出て音羽の町へ至りつゝ路地へは入しが何處で聞んと其所等そこら迂路々々うろ/\爲しゝすゑ見れば大藤がとなりの家にて老婆一にんぜんに向ひ夜食やしよくと云へど未だ暮ぬ長日の頃の飯急めしいそぎ和吉は見やりて打點頭うちうなづき會釋ゑしやく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かひに行かんとせしが能々よく/\思へばお夜食やしよくのお米もなければ詮方なく進度あげたき鰻も買うこと成ず是程せつなき譯なれば御相談は爰の處お前樣もお良人つれあひのお手前もあらんが唯今申通りの譯なれば御氣の毒なれども何卒金子三兩夫共御都合ごつがふわるくば二兩にてもよろしく母樣の御病氣の御全快迄御貸下さる樣御願ひ申上ますとをがみつ泣つ頼みいり此金子の出來し事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)