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うづめ
旧冬より
降積たる雪家の
棟よりも高く、春になりても家内
薄暗きゆゑ、
高窓を
埋たる雪を
掘のけて
明をとること前にもいへるが如し。
昔より
云傳たりまた里人の
茶話にも
朝に出る日
夕に入る日も
輝き渡る山の
端は黄金千兩錢千
貫漆千
樽朱砂千
斤埋ありとは云へど
誰ありて其
在處を
旧冬より
降積たる雪家の
棟よりも高く、春になりても家内
薄暗きゆゑ、
高窓を
埋たる雪を
掘のけて
明をとること前にもいへるが如し。
引拔深く掘りて
密に其下へ
埋ける爰に
駕籠舁の善六と
云は神奈川宿にて
正直の名を
取し者なり昨日龜屋へ一宿を
掘ざれば家の用
路を
塞ぎ
人家を
埋て人の
出べき
処もなく、
力強家も
幾万斤の雪の
重量に
推砕んをおそるゝゆゑ、家として雪を
掘ざるはなし。
雪下事
盛なる
時は、
積る雪家を
埋て雪と
屋上と
均く
平になり、
明のとるべき処なく、
昼も
暗夜のごとく
燈火を
照して家の内は
夜昼をわかたず。