かこみ)” の例文
旧字:
己達はかこみを突いて出ようとしたが、二人の剣は功を奏せなかつた。己は造做ぞうさもなく打ち倒されて、猿轡を嵌められ布で目隠しをせられた。
復讐 (新字旧仮名) / アンリ・ド・レニエ(著)
福等は余衆を率いて営に入り、塁門をふさぎて堅守しけるが、福この令を下して、明旦めいたん砲声三たびするを聞かば、かこみを突いて出で、糧に淮河わいかに就くべし、と示したり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
山桜やまざくらも散ってたけのこが出る四月の末、熊本城のかこみけたので、避難の一家は急いで帰途に就いた。伯父の家から川にうて一里下れば木山町、二里下ると沼山津ぬやまづ村。今夜は沼山津とまりの予定であった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
(わらべも雪中にはわらくつをはくこと雪国のつねなり)さて雪をあつめて土塀とへいを作るやうによほどのかこみをつくりなし、そのあはひにも雪にてかべめく所をつくり、こゝに入り口をひらきてとなりいへとし
お夏は黙ってかこみの中に居るのである。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もうかこみは押し戻された。己の考では
道衍どうえん書をせて曰く、師老いたり、請うしばらく北平にかえりて後挙を図りたまえと。王かこみを撤して還る。鉉と盛庸と勢に乗じて之を追い、遂に徳州を回復し、官軍おおいに振う。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
すべてのかこみにも入り口をひらく。
燕王衝撃はなはつとむれどもづることを得ず、ほとんど其のるところとならんとす。朱能しゅのう周長しゅうちょう等、王の急を見、韃靼だったん騎兵をはなって庸の軍の東北角を撃つ。庸これふせがしめ、かこみやゝゆるむ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)