はしゃ)” の例文
この時は一時間も話した。駄洒落で執達吏をけむに巻く花痩が同席していたから、眉山も元気にはしゃいで少しもシンミリしなかった。
小初が赤い小旗を振って先に歩き出すと、雨で集りの悪い生徒達の団体がいつもの大勢の時より、もっと陽気にはしゃぎ出した。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
……さあさあひときり露台みはらしへ出ようか、で、塀の上から、揃ってものほしへ出たとお思いなさい。日のほかほかと一面に当る中に、声ははしゃぎ、影は踊る。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
皆はウキウキとはしゃいでいた。——代表達は頭を集めて、これからの色々な対策を相談した。「色よい返事」が来なかったら、「覚えてろ!」と思った。
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
つや子は大きなスポンジに湯をふくませ、両手で搾って、自分のおなかへ上から湯をかけながら、はしゃいで笑った。
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
蛇足だそくを加えた。しかし皆はナカ/\床につかない。初めて宿屋に泊るのが嬉しくて、いつまでもはしゃいでいる。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そこで羽ばたきをして飛んで往くと、たくさんの朋輩の鴉ががあがあとはしゃいで飛んでいた。そして、それに随いて往って往来している舟の帆檣ほばしらの周囲を飛んだ。
竹青 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
実際この内儀さんのはしゃいだ雑言ぞうごんには往来の人たちがおもしろがって笑っている。君は当惑して、そりの後ろに回って三四間ぐんぐん押してやらなければならなかった。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
いよいよはしゃぎ出して手がつけられなくなる心配があるのに、この時はめっきりおとなしいものだから、米友がそこに気がついて見返ると、先生は、番付をタラリとして
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
若い人たちヤンガ・ジェネレイションのあいだにおける性道徳の衰退——なんかとリンゼイ判事あたりが慨世的にはしゃぎ立ててるうちに、英吉利イギリスでは、や一つの新戦法が発明されて、どんどん実用に供されている。
踊る地平線:11 白い謝肉祭 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
しかも東京の騒動が利いていたせいか、踊る客人は極めて僅少で、ただ一人若い医者らしいスマートな男が、一人ではしゃいで踊っているのを、大勢の女がヤンヤと持てはやしているだけであった。
冥土行進曲 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
舟眩ふなよいなどと言うことは、他の国の話でもあるかのようにはしゃいでいる。
葵原夫人の鯛釣 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
子供たちが場内の整理や、着更きがえなどに小止こやみもなく動きまわっている間、テントばりの父兄席では、そこここに楽しい交歓が行われ、はしゃいだ話声や、賑やかな笑い声が雲のように湧きあがっていた。
霧の蕃社 (新字新仮名) / 中村地平(著)
わざと思切ってしみったれな真似をした挙句あげくに過分な茶代を気張って見たり、シンネリムッツリと仏頂面ぶっちょうづらをして置いて急にはしゃぎ出して騒いで見たり
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
一寸ちょっとはしゃいだ、お転婆てんばらしい、その銀杏返の声がすると、ちらりと瞳が動く時、顔が半分無理に覗いて、フフンと口許で笑いながら、こう手が、よっかかりを越して、姉の円髷の横へつたわって
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いつのまにかくさむらの上に立ってこちらを見ているのは、例の、飛騨の高山の穀屋こくやの後家さんであります。その声を聞くと、竜之助が身顫みぶるいをしました。今の悪戯いたずらはこいつだ。年甲斐としがいもないはしゃぎ方だ。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と卓造君はいつになくはしゃいだ。それは兎に角
村の成功者 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
その当座はまるで嫁入咄がきまった少女のように浮き浮きとはしゃいでいた。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)