)” の例文
聴水は可笑おかしさをこらえて、「あわただし何事ぞや。おもての色も常ならぬに……物にや追はれ給ひたる」ト、といかくれば。黒衣は初めて太息といき
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
余儀なく寐返りを打ち溜息をきながら眠らずして夢を見ている内に、一番どりうたい二番鶏が唱い、漸くあけがた近くなる。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
客等きやくら立去たちさつてからも、かれ一人ひとり少時しばらく惡體あくたいいてゐる。しか段々だん/\落着おちつくにしたがつて、有繋さすがにミハイル、アウエリヤヌヰチにたいしてはどくで、さだめし恥入はぢいつてゐることだらうとおもへば。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
わが口を子の口に
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
臨終いまわきわに、兼てより懇意こころやすくせし、裏の牧場まきばに飼はれたる、牡丹ぼたんといふ牝牛めうしをば、わが枕ひよせ。苦しき息をほっ
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
お勢は紳士にも貴婦人にも眼をめぬ代り、束髪の令嬢を穴の開く程目守みつめて一心不乱、傍目わきめを触らなかった、呼吸いきをもかなかッた、母親が物を言懸けても返答もしなかった。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
客等きゃくら立去たちさってからも、かれ一人ひとりでまだしばらく悪体あくたいいている。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
猿ははたと地に平伏ひれふして、熟柿じゅくし臭き息をき、「こは何処いずくの犬殿にて渡らせ給ふぞ。やつがれはこのあたりいやしき山猿にて候。今のたもふ黒衣とは、僕が無二の友ならねば、元より僕が事にも候はず」
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)