取交とりま)” の例文
むらさきがわ巾着きんちゃくであった。その金入れの中には、金銀取交とりまぜてだいぶの額が入っていた、又八は数えるだけでも自分の心が怖くなって、思わず
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
佐分利は二年生たりしより既に高利の大火坑にちて、今はしも連帯一判、取交とりま五口いつくちの債務六百四十何円の呵責かしやくあぶらとらるる身の上にぞありける。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
雪江さんの言草が可笑おかしかったばかりじゃない。実は胸に余る嬉しさやら、何やらやら取交とりまぜて高笑いしたのだ。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
大小取交とりまぜた分厚い札束を、いい加減に二分して左右の内ポケットに突込んだ私は、すこしくつろいだ気持になった。すすめられるまにまに細巻の金口きんぐちを取って火をけた。
けむりを吐かぬ煙突 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
日本料理や惣菜そうざい料理を拵えるにも先ずその食物の性質を調べてから取合せをしなければならん。近頃はよく日本料理と西洋料理とを無闇矢鱈むやみやたら取交とりまぜて合の子の折衷料理が出来る。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
自分のすきなものが小さい葢物ふたものに這入ったり、一寸ちょっと片口に這入ったり小皿に入れたりして有りますが、碌なものはありません、お芋の煮たのや豆の煮たのやなにかを取交とりまぜて有ります
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
かぞえれば百にもあまおんな出入でいり出来事できごとは、おせんの茶見世ちゃみせやす人達ひとたちあいだにさえ、くともなく、かたるともなくつたえられて、うそまこと取交とりまぜた出来事できごとが、きのうよりはきょう、きょうよりは明日あす
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
さて政宗出坐して氏郷を請じ入れ、時勢であるから茶談軍談取交とりまぜて、むしろ軍事談の方を多く会話したろうが、此時氏郷が、佐沼への道の程に一揆いっきの城は何程候、と前路の模様を問うたに対し、政宗は
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
日頃の用心もそのかいなく鳥き花落ちる頃に及んでかえって流行感冒にかかりつづいて雨の多かったためか新竹伸びて枇杷びわ熟する頃まで湯たんぽに腹あたためぬ日とてはなく食事の前後数うれば日に都合六回水薬粉薬取交とりまぜて服用するわずらわしさ。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
所謂いわゆるエロ、グロ、ノンセンスのモノスゴイところを取交とりまぜて科学文明の屋根裏から地下室……アタマ文化の電車通りから横路地に到るまで、昼夜不断にウヨウヨヒョロヒョロと
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)