単身たんしん)” の例文
旧字:單身
先に首尾よく万吉をたおしたお十夜は、その気勢に乗って、舟が岸近く流れよった所を狙って、向う見ずに単身たんしんポンと身を躍らした。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのときも一行中に犬吠いぬぼえという慾の深い男がいて、月の世界の黄金塊おうごんかいをギッシリ積むと、隊長と私とを残して置いて、単身たんしん飛びだしたんです。
月世界探険記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
この日、下島しもじま先生の夫人、単身たんしん大震中の薬局に入り、薬剤の棚の倒れんとするをささふ。為めに出火のうれひなきを得たり。胆勇たんゆう、僕などの及ぶところにあらず。
単身たんしんさってその跡をかくすこともあらんには、世間の人も始めてその誠のるところを知りてその清操せいそうふくし、旧政府放解ほうかい始末しまつも真に氏の功名にすると同時に
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ふたりの報告を受けとった海蛇うみへびは、つぎの日単身たんしんで川ぶちの茂林にひそんで、きみらの動静どうせいをさぐった
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
わたくし単身たんしん瀑壺たきつぼそばとうってうえのおみやもうで、はは願望ねがいをかなえさせてくださるようおたのみしました。
ついにうしろ髪を引かれる思いで源助町へ駈けつけ、騒ぎの真ん中へ飛び込んで、単身たんしん喬之助を縛したのだが——いよいよ大岡様の前へ引き出してみると、それは茨右近だったのである。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
現に銀座を出て、単身たんしんこの横浜はまに流れて来たのも、所詮しょせんは大きいムッとするものを感じたせいではなかったか。
疑問の金塊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
艇長は残りの二人を手で制して、ピストル片手に単身たんしん底穴そこあなに降りていったが、やがて激しいののしりの声と共に、見慣れない一人の青年のえりがみをとって上へ上って来た。
月世界探険記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかしこの広くない島にしろポチは何にひかれて単身たんしんもぐりこんでしまったのであろうか。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「実は、君に頼みたいというのは君が単身たんしんで、彼奴あいつに面会をしてくれることだ」
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
殊に僚機の第二号機に竹花たけはな中尉、第三号機には熊内くまうち中尉が単身たんしん乗りこんでいたが、その水際みずぎわだった操縦ぶりは、演習という気分をとおりすぎて、むしろ実戦かと思われるほど壮快無比なもので
恐しき通夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そこまではいいが、とたんに、下腹を座席へ固くしめつけているはずの生命の帯皮おびかわにわかかにゆるみ、からだが逆さになって、その緩んだ帯皮から、だらりとぶらさがる。機を放れて、単身たんしん墜落の感じだ。
三重宙返りの記 (新字新仮名) / 海野十三(著)