千鈞せんきん)” の例文
千鈞せんきんの重みのある所です。彼れは実に尚亨が予言した通り、沖縄に金の箍をはめて延宝三年(西暦一六七五)にこの世を辞しました。
琉球史の趨勢 (新字新仮名) / 伊波普猷(著)
やっぱり女だな、女の髪には千鈞せんきんの力があると昔からいわれているが、やっぱり本当だな! と思ったことがあったですからな!
日本橋附近 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
この歌はいずれも趣向の複雑したる歌なれば結句に千鈞せんきんの力なかるべからず。しかるに二首ともに結句の力、上三句に比して弱きを覚ゆ。
曙覧の歌 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
しかしその一語は、あらためて、千鈞せんきんの重さで各〻の生命に深い覚悟の反復を迫ッたらしい。満座は声もなかったが、やがて
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
組んでいる腕と腕との間が、しとしと汗ばんで、美和子の言葉を聞いていると、彼女の軽い腕が、千鈞せんきんの重みを持って来る。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
差当りは高清水の敵城をほふらんと進行したのは稀有けうな陣法で、氏郷雄毅ゆうき深沈とは云え、十死一生、危きこと一髪を以て千鈞せんきんつなぐものである。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
だから僕が何かにつけて有利のようだけれども、有りていはそうではないので、何と言っても葛巻の純粋な立場には千鈞せんきんの重味があるのである。
青い絨毯 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
という台辞せりふには、暗さや哀しさはほとんど感じられなかった。それ故にこそその言葉は、今の栄介にとって、千鈞せんきんの重みを持ってのしかかって来る。
狂い凧 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
塔の高さと実によく釣り合ったこの相輪の頂上には、美しい水煙すいえんが、塔全体の調和をここに集めたかのように、かろやかに、しかも千鈞せんきんの重味をもって掛かっている。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
千鈞せんきんかなえを挙げる勇者をかれは見たことがある。めい千里の外を察する智者ちしゃの話も聞いたことがある。しかし、孔子に在るものは、決してそんな怪物かいぶつめいた異常さではない。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
(中略)鯁諤かうがくの作左を首肯せしめしには、家康必ず若干の苦労ありしなるべく、作左も亦己れを抑えて、もだし難き君命を奉ぜしには、千鈞せんきんの力をもて勇断せしなるべし。
大久保湖州 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ダントンの言ったことばに「パンののちには、教育が国民にとって最もたいせつなものである」ということがあるが、このパンののちにはという一句は千鈞せんきんの重みがある。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
千鈞せんきんの重さで、すくんだ頸首くび獅噛しがみついて離れようとしません、世間様へお附合ばかり少々櫛目を入れましたこの素頭すあたま捻向ねじむけて見ました処が、何と拍子ぬけにも何にも
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
夢の中では、彼は私の胸に千鈞せんきんの重さでのしかかって私ののどを絞めつけます。
やゝもすれば見と信とを対せしめては、信の一義に宗教上千鈞せんきんの重きをくを常とし、而して見の一義に至りては之れを説くものまれ也、いはんや其の光輝ある意義を搉揮かくきするものに於いてをや。
予が見神の実験 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
爾余じよの十人よりも、この人ひとりを迎えれば、われわれの誓いは千鈞せんきんの重きを加えよう。……なおなお、ありがたいことには、玄徳と彼の義兄弟のあいだにも、いつかは曹操を
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かりそめの誓いを千鈞せんきんの重きに感じて、この山手組の大敵の中へ、たッた二人で飛び込んで来てくれた義気任侠——新九郎はその心意気にたれて、いきなり駕の中から大刀を引ッ抱えて飛び出し
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秀吉も、それを知るので、千鈞せんきんの重責を肩にうけた感じだった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)