伯母と母はしきりに知り人の名を数えあげたが、それはみんな匿名の必要のない人であり、毛布二枚を買う資力のない人ばかりであった。
「そうさ、匿名批評には、毒殺的効果があると云うじゃないか」法水はグイと下唇を噛み締めたが、実に意表外な観察を述べた。
四月十日に江戸永田町の室賀源七郎正俊が邸へ匿名の書を持つて來たものがある。肥後國熊本の城主加藤肥後守忠廣逆心云々の文面である。
バージェスのこの短篇集は一九一二年に匿名で出版されたが、手品師バージェスは暗号詩によって自分の名を目次の中へちゃんと隠しておいた。