刺激しげき)” の例文
しめやかな薫香くんこうにおいに深く包まれておいでになることも、柔らかに大将の官能を刺激しげきする、きわめて上品な可憐かれんさのある方であった。
源氏物語:39 夕霧一 (新字新仮名) / 紫式部(著)
くさいのきたないのというところは通り越している。すべての光景が文学的頭の矢野には、その刺激しげきにたえられない思いがする、寒気さむけがする。
廃める (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
と、かなり激昂げきこうしたような声が、みんなの耳をいきなり刺激しげきした。それは次郎の耳にはききおぼえのある、しゃがれた声だった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
ひと交際かうさいすることかれいたつてこのんでゐたが、其神經質そのしんけいしつな、刺激しげきされやす性質せいしつなるがゆゑに、みづかつとめてたれとも交際かうさいせず、したがつまた親友しんいうをもたぬ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ドイツの最尖端せんたん作曲家、ジャズの手法を採り入れて一風変った刺激しげきを持つ音楽を作っている。しかも芸術的であり、楽しくもあるのが面白い。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
ようやく学齢がくれいにたっした大吉のためにランドセルを買いにいっての帰り、はからずも出あった教え子に刺激しげきされてか、もろもろの思い出は胸にあふれた。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
子供こどもちいさな肉体にくたい可憐かれんたましいは、病菌びょうきんが、内部ないぶから侵蝕しんしょくするのと、これを薬品やくひん抗争こうそうする、外部がいぶからの刺激しげきとで、ほとんどえきれなかったのであります。
雲と子守歌 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「僕はてっきりそうだと思っていたがね。だから僕は前にホーテンスにそのことをいいかけて、周章あわてて口を噤んだのだ。彼を無用に刺激しげきしたくはなかったのでね」
地球発狂事件 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
まだ余りよごれていない、病人の白地の浴衣ゆかたが真白に、西洋の古い戦争の油画で、よく真中にかいてある白馬のように、目を刺激しげきするばかりで、周囲の人物も皆褐色である。
カズイスチカ (新字新仮名) / 森鴎外(著)
しかるにある外部の刺激しげきによってこの自覚が急に鮮明となることがしばしばある。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
そうしてその恐ろしさは、眼の前の光景が官能を刺激しげきして起る単調な恐ろしさばかりではありません。私は忽然こつぜんと冷たくなったこの友達によって暗示された運命の恐ろしさを深く感じたのです。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今日の式場と食卓とでうけた刺激しげき余波よはは、かれに小まめな仕事をやらせるには、まだあまりに高かったし、床の間の「平常心」の掛軸かけじく
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
ひと交際こうさいすることはかれいたってこのんでいたが、その神経質しんけいしつな、刺激しげきされやす性質せいしつなるがゆえに、みずかつとめてたれとも交際こうさいせず、したがってまた親友しんゆうをもたぬ。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
テイラー博士のテイクロトロンの研究報告は、俄然がぜん一座を大きく刺激しげきしたようであった。
諜報中継局 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかもその勢いは、かれが中佐の声と佩剣の伴奏とから直接刺激しげきをうける場合のそれよりも、はるかに強力だった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)