切戸きりど)” の例文
ばおすゝぎなさるがよいと言れてよろこ會釋ゑしやくしてやれし垣根の切戸きりどけ廣くも非ぬ庭へ進むに老人背後うしろ見返みかへりておみつ水を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それで彼女は思い切ってまた切戸きりどを開けて外をのぞこうとする途端とたんに、一本の光る抜身ぬきみが、やみの中から、四角に切った潜戸の中へすうと出た。姉は驚いて身をあと退いた。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
またも手探りで中庭に向っている廊下の途中にある小さな切戸きりどの処へ来ると、その低いドアの中央にある小さな覗き窓にお河童かっぱさんの額を押しつけて青白い外の月夜を覗いた。
継子 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
芝居の上手かみて下手しもての入口は能楽の切戸きりど臆病口おくびょうぐちともいふ)に似て更に数を増して居る。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
と庭の切戸きりどひらきくれゝば
見て大いに驚き盜人は何所へゆきしやらんと家の隅々すみ/″\までさがしけれども最早もはやのがれ行しと見えてには切戸きりどの明て有しかば若い者共表へ走り出其所そこ此處ここよとたづねけるにまたとなりの伊勢屋三郎兵衞方にても盜賊入たりとて大いにさわぎ立ち男共大勢立出見るに板塀いたべいの上を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
明申さず是非ぜひに其の所に車の御座ござかげしばら相休あひやすをり候處夜も丑刻頃やつどきごろ兩人りやうにんの曲者來り一人は伊勢屋いせやの家に忍び入り暫時しばらくすぎて出けるが外に待居まちゐたる者と何かさゝやき其の者は西の方へ馳行はせゆきのこりし一人は其後そのご金屋の切戸きりどより人の出行しあと這入はひりしに女のさけこゑしてほどなく彼の男何やら風呂敷ふろしきに包みたるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)