凋落てうらく)” の例文
若い芸者ばかりのせゐか、ゆき子の肉体は何となく凋落てうらくのきざしをみせてゐる。そのくせ、脚はすくすくとして、胴との均整がとれてゐた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
喜楽の中に人間の五情を没了するは世俗の免かるゝあたはざるところながら、われは万木凋落てうらくの期に当りて、静かに物象を察するの快なるを撰ぶなり。
秋窓雑記 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
(ヨゼツフは童貞女の夫にして耶蘇の義父なり。)なんぞ薔薇を摘まざる、その凋落てうらくせざるひまに。
えうするに勤勉きんべん彼等かれら成熟せいじゆく以前いぜんおいすで青々せい/\たる作物さくもつ活力くわつりよくいでつてるのである。收穫しうくわく季節きせつまつたをはりをげると彼等かれら草木さうもく凋落てうらくとも萎靡ゐびしてしまはねばならぬ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
で解剖される人に向ツて、格別はかないと思ふやうなことも無ければ、死の不幸を悲しむといふやうなことも無かツた。彼の人の死滅に對する感想は、木の葉の凋落てうらくする以上の意味は無かツたので。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
蕭条せうでうとした草木の凋落てうらくは一層先輩の薄命を冥想めいさうさせる種となつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
此処ここにも凋落てうらくがある。
心の姿の研究 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
凋落てうらくいちに鐘鳴り
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
渠も我も何物かの一部分にして、帰するところ即ち一なり。四節の更迭かうてつは、少老盛衰の理と果して幾程の差違かあらむ。樹葉の凋落てうらくは老衰の末後と如何の異別かあらむ。
万物の声と詩人 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
いづれのこずゑ繁茂はんもするちから極度きよくどたつして其處そこ凋落てうらくおもかげかすかにうかんだ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
凋落てうらくくぐひか、ばんか。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)