まどか)” の例文
旧字:
枕山は「同遊已看七回円。」〔同遊已ニ看ル七回まどかナルヲ〕といい湖山は「城東明月七年秋。」〔城東明月七年ノ秋〕といっている。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
睡眠ねむりはとらなければならないだろう。しかし眠りはまどかではあるまい。だが彼は疲労つかれていた。間もなく眠りに入ったらしい。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
が、実際に文庫の編輯にあずかっていたのは楽屋がくや小説の「紅子戯語こうしけご」に現れる眉山びざんさざなみ、思案、紅葉、つきまどか香夢楼緑かむろみどり、及び春亭九華しゅんていきゅうかの八名であった。
静かに来り触れて、我が呼吸をうながす、目を放てば高輪三田の高台より芝山内しばさんないの森に至るまで、見ゆる限りは白妙しらたへ帷帳とばりもとに、混然こんぜんとして夢尚ほまどかなるものの如し
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
結城唐桟とうざんも着心地はよいが、頭が禿げてくると、いつかいかつく見える。亡くなった橘のまどか師が
噺家の着物 (新字新仮名) / 三遊亭金馬(著)
それにはなんじ婚姻を問う、只香勾こうこうを看よ、破鏡重ねてまどかなり、悽惶好仇せいこうこうきゅうと書いてあった。
断橋奇聞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
山の根をうねり、岩に躍り、なぎさかえって、沖を高く中空に動けるは、我ここに天地の間に充満みちみちたり、何物の怪しき影ぞ、まどかなる太陽の光をおおうやとて、大紅玉の悩めるおもてを、ぬぐい洗わんと、苛立ち
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まどかなる滄溟わだのはらなみ巻曲うねり揺蕩たゆたひ
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
「小面」の形とちがう点は、わずかに頣の一ヵ所でもあろうか、「小面」の頣は長いのであったが、お菊の頤はまどかであった。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しおれた花の甘い匂いや仏に捧げた香の香りが、微風に紛れて匂って来た。どこかで小鳥の声がした。木立の茂りに包まれて今までまどかに睡っていたのが、にわかの人声に驚いて夢を破ったに違いない。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)