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來日
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くるひ
丁と
小脇に
引そばめて
上げつゝ、
高々と
仰向いた、さみしい
大な
頭ばかり、
屋根を
覗く
來日ヶ峰の
一處を
黒く
抽いて、
影法師を
前に
落して、
高らかに
笛を
鳴らした。
翌朝、
一風呂キヤ/\と
浴び、
手拭を
絞つたまゝ、からりと
晴れた
天氣の
好さに、
川の
岸を
坦々とさかのぼつて、
來日ヶ峰の
方に
旭に
向つて、
晴々しく
漫歩き
出した。
私は
海の
空を
見た。
輝く
如きは
日本海の
波であらう。
鞍掛山、
太白山は、
黛を
左右に
描いて、
來日ヶ峰は
翠なす
額髮を
近々と、
面ほてりのするまで、じり/\と
情熱の
呼吸を
通はす。