余所事よそごと)” の例文
また妹が一人えました、どうしてうちには男の子が出来ないんでしょうなどと書いてあったが、余所事よそごとのような気持で、うれしくも悲しくもなかった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「何と云ッて出たものだろう?」といて考えてみても、心がいう事を聴かず、それとは全く関繋かんけいもない余所事よそごと何時いつからともなく思ッてしまう。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
吾輩外国人の書を読み、かかる虐政行なわれたればこそ仏国に大不祥の事変を生出せるなれと、余所事よそごとに聞き流したる当時を、今となって反って恋しく思うなり。
神社合祀に関する意見 (新字新仮名) / 南方熊楠(著)
かかる事を確かに聞きながら余所事よそごと看過かんかして国に帰るということはどうしても出来ません。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
捨てられし後は国を慕うはますます切なり、朝は送るに良人りょうじんなく、夕は向うるに恋人なく、今は孤独の身となりて、ととのうべきの家もなく、閑暇がちにて余所事よそごとに心を使い得るにもせよ
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
こゝろつうずるのか、貴下あなた年月としつきち、つても、わたしことをおわすれなさらず、昨日きのふまでも一昨日おとゝひまでも、おもめてくださいましたが、奥様おくさま出来できたので、つひ余所事よそごとになさいました。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それにしても自分の細君が今にも絶息しそうな勢でき込んでいるのを、まるで余所事よそごとのように聴いて、こんなものを平気で読んでいられるところが、如何いかにもくこの男の性質をあらわしていた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と先ず余所事よそごとらしく話しかける。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「ヘー」ト余所事よそごとに聞流していてさらに取合わなかッた、それがいまだに気になって気になってならないので。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
燃えのこりの生命がくすぶり出したような感じで、今まで余所事よそごとのように読みすごして来た外国の作品などに、新らしい興味を覚え、もしも余生がこの先き十年もあるものなら
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
余所事よそごとに思わぬ経済主義
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
ついにはホッと精を尽かしてしまい、勇には随意に空気を鼓動さして置いて、自分は自分で余所事よそごとを、と云たところがお勢の上や身の成行で、熟思黙想しながら
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)