仕向しむけ)” の例文
この夫に対する仕向しむけは両三年来の平生へいぜいを貫きて、彼の性質とも病身のゆゑとも許さるるまでに目慣めならされて又彼方あなたよりも咎められざるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
取りてまたたのしむべしうへ此方の仕向しむけによりむこの方より出てゆくときかねかへさずにすむ仕方しかたは如何ほども有べしとおつねちう八の惡巧わるだくみにて種々しゆ/″\に言なしつひに又七を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
れにても同胞はらからかとおもふばかりの相違さうゐなるに、あやしきは母君はヽぎみ仕向しむけにて、流石さすがかるがるしき下々しも/″\たちへだてはけれども、おな物言ものいひの何處どこやらがく
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いや、御本山の御見識、その咽喉のどを聞きに来たとなると……客にまずはかま穿かせる仕向しむけをするな、真剣勝負面白い。で、こっちもいきおい懐中ふところから羽織を出して着直したんだね。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……が、急に、……急にそうかれのこと/″\く気落のしたのは、からきしいくじのなくなったのは、一つには、今度のふしだらについての女房の仕向しむけのあんに相違するものがあったからだった。
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)