人形ひとがた)” の例文
猶其の上に靈作れいさ妙用めうようあることは、古より傳はつてゐることで、延喜式に數〻見えたる呴の字や、江次第に「人形ひとがたをもていきかけさしめ給ふ」
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
凄い寂しい車塚の郷の、三軒の廃屋の真ん中の家の、黄昏たそがれのように暗い部屋の中に、人形ひとがたを完全に備えている、五個いつつ木乃伊ミイラが並んでいた。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
從つておしら神時代のそれはただ人形ひとがたであるにとどまつて、これを手に執り持つことに依つてその巫女は神格を得、神人交通の靈力を得たのである。
しかし彼女は人形ひとがたをあぶったり、玉子に針を刺したりして、薄情の男を呪い殺すよりも、いっそこっちから彼を突き放してしまう方がしだと考えた。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
こめのろくれんと三郎兵衞の人形ひとがたこしらへ是へくぎうつて或夜三郎兵衞が裏口うらぐちよりしのび入り居間ゐまえんの下にうづめ置是で遺恨ゐこん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
誰だか知らないが白い衣を著たへんな人がうしこく参りをして、私にかたどった人形ひとがたに呪いと共に瞋恚しんいの釘を打ち込んでいるのではあるまいかという妄想に襲われたりした。
西隣塾記 (新字新仮名) / 小山清(著)
何でも小石川の床店の組合が、たたみに来たと思ったんだそうで、やつは寝耳で夢中でさ、その癖、燃えてる火のあかりで、ぼんやり詰めかけてる人形ひとがたえたんでしょう。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はよう、犬と人形ひとがたをお持ち帰りになって、しかじかかくかくと申しあげ、クロの忠義をたてておやりなせえまし——伝あにい、早く手配しな。お嬢さまにはお駕籠かごを雇ってね。
人形ひとがた樹立こだち
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
あらため見るに我が居間ゐまえんの下より怪きはこさがし出しふたあけけるにおのれのろ人形ひとがたなれば大いに怒り夫より呪咀しゆそ始末しまつ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その指先の向かった所に、雪に人形ひとがたいんせられていた。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
今、姥は壇上の人形ひとがたを取った。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)