些少すこし)” の例文
『音さん。四斗七升の何のと言はないで、何卒どうか悉皆すつかり地親ぢやうやさんの方へ上げて了つて御呉おくんなんしよや——わしはもう些少すこしりやせん。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
左の肋骨などは、宛然鶏を料理するように、殆んど一本一本丁寧に×り×してあって、やっと、皮膚と些少すこしの筋で継がっている状態だった。
双面獣 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
勿論もちろんそんな様子の些少すこしでも見えた事は無い。自分の僻見ひがみに過ぎんのだけれども、気が済まないから愚痴も出るのだ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
這うようになおも辺りを見れば、飯粒の乾枯ひからびたの、鰹節の破片かけらなどが、染甕の内外に、些少すこしだが散らばっている。釘抜藤吉、突然上を向いて狂人のように笑い出した。と
かれ風呂敷包ふろしきづゝみからつゝあつた金錢きんせん些少すこしのものであつたが、それはときとしてかれこはばつたしたてきした食料しよくれうあるものもとめるほかに一部分ぶぶん與吉よきちちひさなおとされるのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
些少すこし落着おちついて青年わかものいた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
後来のちのちきつと思中おもひあたるから、今夜の事を忘れるなとお言ひの声も、今だに耳に付いてゐるわ。私の一図の迷とは謂ひながら何為なぜあの時に些少すこしでも気が着かなかつたか。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
中には頬のあかい、眼付の愛らしい子もあつて、普通の家の小供と些少すこしも相違の無いのがある。中には又、卑しい、愚鈍おろかしい、どう見ても日蔭者の子らしいのがある。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
かれには些少すこしでもその顛末てんまついてくれべきものは醫者いしやみなみ亭主ていしゆとよりほかはなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
こりや真面目まじめな問題だよ——茶を飲むやうな尋常あたりまへな事とは些少すこし訳が違ふよ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)