だま)” の例文
何がさて娘の頼みだ、聴いてらん法はないと、ミハイロは財布の紐を解いて、かせめた金の中から、十銭だまを一つ出して遣つた。
椋のミハイロ (新字旧仮名) / ボレスワフ・プルス(著)
その間にも、何も知らぬ地下の花火係は、主人達の目を喜ばせようと、用意の花火だまを、次から次へ打上げていました。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
先年七月の十七日、長州の大兵が京都を包囲した時、あの時の流れだまはしばしば飛んで宮中の内垣うちがきにまで達したという。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「一ことも残さずすっかりだ、畜生!」とジョンは答えた。「これを厭だというなら、あんた方はわしの見納みおさめで、後は鉄砲だまをお見舞みめえするだけだ。」
仮令一発二発の鉄砲だまに当っても何程の事あるべき、踏込んでかたきを討たずに置くべきやと、ふいに切込み、卑怯だと云いながら喧嘩龜藏の腕を切り落しました。
むさはじだまは、ある時は禅僧のやうな露伴の懐中ふところに飛び込み、ある時は山狗やまいぬのやうな緑雨の襟首に滑り込み、またある時は気取屋の紅葉の鼻先きをかすめて飛んだ。
同じような警護かための関を通り抜けて行く間に、はや戦争は始まってるという話、今、道でシュッシュッと異様な音の耳を掠めたのは、鉄砲だまの飛び行く音であったことに心附き
「お金さん、ちょっと見て来て下さい。バラだまを入れて打つと危険あぶないから」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そんな事を言ひ乍ら、二人は鐵砲だまのやうに一色道庵の門を潜りました。
てツぽだまがとんだ
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
流れだまはしばしば飛んで宮中の内垣うちがきに及んだという。板輿いたこしをお庭にかつぎ入れてみかどの御動座をはかりまいらせるものがあったけれども、一橋慶喜はそれをおさえて動かなかったという。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あるいは百姓家で挽割ひきわりぬすみ、米其のほかの食物を運んで隠れて居ります、さ、これでは成らぬと槍鉄砲を持って向った所が穴の中がう成ってゝ鉄砲だまが通らぬから、何様どんな事をしてもいかぬ
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)