両方ふたかた)” の例文
旧字:兩方
実家さとには親御様お両方ふたかたともお達者なり、姑御しゅうとごと申すはなし、小姑一にんございますか。旦那様は御存じでもございましょう。
清心庵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ただ人並ひとなみみすぐれて情義深なさけふかいことは、お両方ふたかた共通きょうつう美点みてんで、矢張やは御姉妹ごきょうだい血筋ちすじあらそわれないように見受みうけられます……。
... 持ったからお両方ふたかたが御上京になってもお宿を申すに差し支えないとこう書いてある」伯母おばは聞く内に顔の色変われり
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「なアに大丈夫です、これしきのことにヘコたれちゃ、目明しという肩書に面目がありゃしません。そうだ! 何より先にお両方ふたかたへお目にかけたい品があります」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
我をやしなはんとならば人めみぐるしからぬ業をせよとなんの給ふ、そもことはりぞかし、わが両方ふたかたははやく志をたて給ひてこの府にのぼり給ひしも、名をのぞみ給へば成りけめ。
樋口一葉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
そっくりお両方ふたかたの紋が比翼に付いて居るてえのは何うも妙で、一寸ちょっとこれは何うです旦那……
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「いやお両方ふたかたの間柄は、心の上での相愛でござれば未だ不義とは申されますまい!」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
……この両方ふたかただって、おなじく手拭浴衣一枚で、生命をたすかって、この蚊帳を板にした同然な、節穴と隙間だらけのバラックに住んでいるのに、それでさえそう言った。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もうすまでもなく竜宮界りゅうぐうかいだい一の乙姫様おとひめさまッしゃるのが豐玉姫様とよたまひめさまだい二の乙姫様おとひめさま玉依姫様たまよりひめさま、つまりこの両方ふたかた御姉妹ごきょうだい間柄あいだがらということになってるのでございますが
「さあ、これでいい。どうぞお両方ふたかたも御安心くださいまし。もう人目はございませんから」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かくこの両方ふたかた竜宮界りゅうぐうかいっての花形はながたであらせられ、おかおもお気性きしょうも、何所どこやら共通きょうつうところがあるのでございますが、しかしきつづいて、幾代いくだいかにわたりて御分霊ごぶんれいしてられるうちには