世間よのなか)” の例文
自分は当時の世間よのなかに事実全身に刺青ほりものをなし万引まんびきをして歩いたやうな毒婦が幾人いくたりあつたにしても、其れをば矢張やはり一種の芸術的現象と見倣みなしてしまふ。
虫干 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
おまえはまだ年が若かで、世間よのなかを知ンなさらンがの、よくいうわ、それ、小の虫を殺しても大の虫は助けろじゃ。なあ。浪は小の虫、おまえ——川島家は大の虫じゃ、の。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
「風まじり雨降る夜の、……如何にしつつか、が世は渡る」といえば、一人が、「天地は広しといへど、あがためくやなりぬる、……斯くばかりすべ無きものか、世間よのなかの道」
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
病気やまいが出るほど嫌な人でも、世間よのなかにゃ勝たれないから、たとい旦那が思い切って、縁を切ろうといってもね、どんな腹いせでも旦那にさせて、私ゃ、あやまって出てかない。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
世間よのなかを憂しとやさしと思へども飛びさりかねつ鳥にしあらねば(巻五)
万葉集の恋歌に就て (新字旧仮名) / 三好達治(著)
御気象ならいづ阿母おつかさんに立ちまさつて、彼様ああして世間よのなかの花とも、教会の光とも敬はれてらつしやるに、阿父おとうさんの御様子ツたら、まア何事で御座います、臨終いまはの奥様に御誓ひなされた神様への節操みさを
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
あはれ/\この世間よのなかもあらじとぞおもふ
かくばかり 術なきものか 世間よのなかの道
日本の美 (新字新仮名) / 中井正一(著)
世間よのなかしとやさしとおもへどもちかねつとりにしあらねば 〔巻五・八九三〕 山上憶良
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
ひげの留守に僕と談話はなしでもしている処へ唐突だしぬけ戸外おもてがあけば、いま姉様がいった世間よのなかの何とかで、吃驚びっくりしないにも限らないが、こうしてみるに、なにもその時にゃ限らないようだ。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
画工 よし、この世間よのなかを、酔って踊りゃ本望だ。
紅玉 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
して世間よのなか蒼生あをひとぐさ、誰か子をしまざらめや
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
画工 よし、此の世間よのなかを、つて踊りや本望ほんもうだ。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)