不惑ふわく)” の例文
自分からより以上を望んで、他の豪族との境をさえおかさない限りは、彼の不惑ふわくをこえた将来は悠悠と、彼の思うとおりに送れよう。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不惑ふわくよ、あなた。四十にして惑わずよ。いつまでもお若い積りでいらっしゃると笑われますわ。慎んで戴きます」
四十不惑 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
言語道断な助平ばかりで、まず不惑ふわくという年頃までは、女のほかの何事も考えるということがない。
勉強記 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
よわい既に不惑ふわくを越え、文名やや高く、可憐無邪気の恋物語をも創り、市井しせい婦女子をうっとりさせて、汚れない清潔の性格のように思われている様子でありますが、内心はなかなか
女の決闘 (新字新仮名) / 太宰治(著)
もちろん人によっては而立じりつの年に至っても立ち得ず、不惑ふわくの年に至ってなお惑溺わくできの底にあり、知命ちめいの年に焦燥して道を踏みはずし、耳順じじゅんの年に我意をもって人と争うこともあるであろう。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
長生をしてこの二人のように頭がたしかに使えるのはなおさらめでたい。不惑ふわくよわいを越すと間もなく死のうとして、わずかに助かった余は、これからいつまで生きられるかもとより分らない。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
くちよければ仕入しいれあたらしく新田につた苗字めうじそのまゝ暖簾のれんにそめて帳場格子ちやうばがうしにやにさがるあるじの運平うんぺい不惑ふわくといふ四十男しじふをとこあかがほにしてほねたくましきは薄醤油うすじやうゆきすかれひそだちてのせちがらさなめこゝろみぬわたりの旦那だんなかぶとはおぼえざりけり
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一方——父草雲はといえば、年ようやく不惑ふわくをこえること五年、いわゆる、彼の生涯の一期劃をなす「浅草草雲時代」の惨心さんしんいたましき行道に、はいっていたのである。
田崎草雲とその子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
医者に言わせると人間の身体は二十五で成熟せいじゅくする。しかし俺に言わせると人間の精神は四十で成熟する。孔子が不惑ふわくと言ったのは案外話せると思っている。俺はこれからだ。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
四十不惑ふわくというが、おれは四十を七つも越えてからあんな失策をやって、ろくを離れ家名をつぶし、あまつさえ独りの子まで他国へ流浪させてしまった。……考えれば慚愧ざんきにたえない。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「四十不惑ふわくとか申すに」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不惑ふわく大惑だいわく
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
年は不惑ふわく
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)