“三本(みもと)” の例文
撫子(なでしこ)。円髷(まるまげ)、前垂(まえだれ)がけ、床の間の花籠(はなかご)に、黄の小菊と白菊の大輪なるを莟(つぼみ)まじり投入れにしたるを視(なが)め、手に三本(みもと)ばかり常夏(とこなつ)の花を持つ。
錦染滝白糸:――其一幕―― (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
垣に朝顔、藤豆を植ゑ、蓼を海棠(かいだう)の下(もと)に、蝦夷菊唐黍を茶畑の前に、五本(いつもと)三本(みもと)培(つちか)ひつ。彼(か)の名にしおふシヽデンは庭の一段高き処、飛石の傍(かたへ)に植ゑたり。
草あやめ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
その女のつれが、摘んで、渡すのを、自分の見つけたのと二本(ふたもと)三本(みもと)、嬉しそうに手にした時……いや、まだ、その、一本(ひともと)、二本、三本を算(かぞ)えない時であった。
一方八重の遅桜(おそざくら)、三本(みもと)ばかり咲満ちたる中に、よろず屋の店見ゆ。鎖(とざ)したる硝子戸(がらすど)に、綿、紙、反もの類。生椎茸(なましいたけ)あり。起癈散(きはいさん)、清暑水など、いろいろに認(したた)む。
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
丈(たけ)より高(たか)い一面(めん)の雑草(ざつさう)の中(なか)に、三本(みもと)、五本(いつもと)また七本(なゝもと)、淡(あは)い紫(むらさき)の露(つゆ)の流(なが)るゝばかり、且(かつ)飛(と)ぶ処(ところ)に、茎(くき)の高(たか)い見事(みごと)な桔梗(ききやう)が、——まことに、桔梗色(ききやういろ)に咲(さ)いたのであつた。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
私の両親(ふたおや)の墓は、ついこの右の方の丘(おか)の松蔭(まつかげ)にあるんだが、そこへ参詣(おまいり)をして、墳墓(はか)の土に、薫(かおり)の良(い)い、菫(すみれ)の花が咲いていたから、東京へ持って帰ろうと思って、三本(みもと)ばかり摘(つ)んで
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
車で見た合歓(ねむ)の花は、あたかもこの庭の、黒塀の外になって、用水はその下を、門前の石橋続きに折曲って流るるので、惜いかな、庭はただ二本(ふたもと)三本(みもと)を植棄てた、長方形の空地に過ぎぬが
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)