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一毫
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いちごう
ふりがな文庫
“
一毫
(
いちごう
)” の例文
人から
一毫
(
いちごう
)
も
犯
(
おか
)
されまいと、強い点をあくまで固守すると同時に、せめて
半毛
(
はんもう
)
でも人を
侵
(
おか
)
してやろうと、弱いところは無理にも
拡
(
ひろ
)
げたくなる。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この三輪田先生が
環
(
たまき
)
女史の離婚を評して「二人の職業から来る趣味の差別などは夫婦としての情愛に
一毫
(
いちごう
)
も加うる所がないはずでなければならぬ」
離婚について
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
心思の自由は天地を極め古今を
窮
(
きわ
)
めて
一毫
(
いちごう
)
増損なき者なり。しかれども文物の盛否と人の賢愚とに因り、その及ぶ所あるいは少差異なきこと
能
(
あた
)
はず。
『東洋自由新聞』第一号社説
(新字旧仮名)
/
中江兆民
(著)
これは心の
秤
(
はかり
)
から見れば、云わば
一毫
(
いちごう
)
を加えたほどの
吊合
(
つりあ
)
いの狂いかもわかりませぬ。けれども数馬はこの依怙のために大事の試合を
仕損
(
しそん
)
じました。
三右衛門の罪
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
各藩相互に自家の
利害
(
りがい
)
栄辱
(
えいじょく
)
を重んじ
一毫
(
いちごう
)
の
微
(
び
)
も他に
譲
(
ゆず
)
らずして、その競争の
極
(
きょく
)
は他を損じても自から利せんとしたるがごとき事実を見てもこれを証すべし。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
▼ もっと見る
それは利休に
一毫
(
いちごう
)
のウソもなくて、利休の佳とし、おもしろいとし、貴しとした物は、真に佳なるもの、真におもしろい物、真に貴い物であったからである。
骨董
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
一毫
(
いちごう
)
の差をもゆるがせにしなかった、あの細密な検討の心構えについては時に応じてこれを説き、自己の製作にこれを施して、遂に
倦
(
う
)
むことを知らなかった。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
平次の明智は、
一毫
(
いちごう
)
の曇りもありません。何から何まで、推理の上に築いた想像ですが、それが抜き差しならぬ現実となって、二人の用人の
胆
(
きも
)
を奪ったのです。
銭形平次捕物控:051 迷子札
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そのとき正直に、
一毫
(
いちごう
)
も回避せず、悪は悪として見ることを恐れてはいけない。世界はいかに悪と不調和とに満ちていることよ。何人もそれを認めないことはできない。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
昔、道元禅師が支那から帰って来た時、「空手にして郷に還る。ゆえに
一毫
(
いちごう
)
も仏法なし」
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
よいか、殺を論じて、
一毫
(
いちごう
)
を破らず、活を論じて、喪身失命すとは、このことじゃ。わしは、殺を論じたが、一毫も、自他を破らぬが、彼の仁、活を論じて、自らを失っておる。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
◯友今や頼むに足らず、友の言はいたずらに我を怒らすも、
一毫
(
いちごう
)
の
慰藉
(
いしゃ
)
をも我に与えない。しからばわが願う所は依然として死の一のみと、かくて八節—十三節の語となったのである。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
素
(
も
)
と自分の洋行せしは、親より
強
(
し
)
いて従妹なる者と結婚せしめられ、初めより
一毫
(
いちごう
)
の愛とてもなきものを、さりとは押し付けの至りなるが腹立たしく、
自暴
(
やけ
)
より思い付ける遊学なりき。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
迂老は幼にして貧、長じて医を学び、
紀伊国
(
きいのくに
)
濱口梧陵翁
(
はまぐちごりょうおう
)
の愛護を受け、幸に一家を興すことを得たりと
雖
(
いえども
)
、僅に一家を維持し得たるのみにして、世の救済については
一毫
(
いちごう
)
も貢献する所なし。
関牧塲創業記事
(新字新仮名)
/
関寛
(著)
この句以前の俳諧史を知るに
如
(
し
)
かず、意義においては古池に蛙の飛び込む音を聞きたりといふ外、
一毫
(
いちごう
)
も加ふべきものあらず、もし一毫だもこれに加へなば、そは古池の句の真相に非るなり。
古池の句の弁
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
親の愛は実に純粋である、その間
一毫
(
いちごう
)
も利害得失の念を挟む余地はない。
我が子の死
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
私は兄さんの言葉に
一毫
(
いちごう
)
も虚偽の分子の交っていない事を保証します。しかし兄さんの恐ろしさを自分の舌で
甞
(
な
)
めて見る事はとてもできません。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
娘のお品を責めてみると、これはもう、言いたくて待ち構えていたところですから、何もかも平次の指金だったことを
一毫
(
いちごう
)
の隠すところなく言ってしまいました。
銭形平次捕物控:014 たぬき囃子
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
常に汝らの挙動に注目して
一毫
(
いちごう
)
も
仮
(
か
)
さず、
鼓
(
つづみ
)
を鳴らしてその罪を責めんと欲する者なり。
日本男子論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
氏郷は法令
厳峻
(
げんしゅん
)
である代りには自ら処することも
一毫
(
いちごう
)
の緩怠も無い、徹底して武人の面目を保ち、徹底して武人の精神を
揮
(
ふる
)
っている。
所謂
(
いわゆる
)
「たぎり切った人」である、ナマヌルな奴では無い。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
その
言
(
こと
)
既に長く、真正面より男子の品行を責めて
一毫
(
いちごう
)
も
仮
(
か
)
さず、水も
洩
(
も
)
らさぬほどに論じ詰めたることなれば、世間無数
疵
(
きず
)
持つ身の男子はあたかも弱点を襲われて
遁
(
のが
)
るるに
路
(
みち
)
なく
日本男子論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
愛の対象は
玩具
(
おもちゃ
)
である。神聖なる玩具である。普通の玩具は
弄
(
もてあそ
)
ばるるだけが能である。愛の玩具は互に弄ぶをもって原則とする。藤尾は男を弄ぶ。
一毫
(
いちごう
)
も男から弄ばるる事を許さぬ。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この点においては
一毫
(
いちごう
)
の
猶予
(
ゆうよ
)
を
仮
(
か
)
さず、無理無則、これ我が敵なりとて、あたかも天下の公衆を相手に取りて
憚
(
はばか
)
るところなく、古学主義の生存するところを許さざるほどに戦う者なりといえども
慶応義塾学生諸氏に告ぐ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
一毫
(
いちごう
)
も道草を食ったり寄道をして油を売ってはならぬ小説を云うのである。
呑気
(
のんき
)
な分子、気楽な要素のない小説を云うのである。たとえばイブセンの脚本を小説に直した様なものを云うのである。
高浜虚子著『鶏頭』序
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
“一毫”の意味
《名詞》
ほんのわずか。
(出典:Wiktionary)
一
常用漢字
小1
部首:⼀
1画
毫
漢検1級
部首:⽑
11画
“一毫”で始まる語句
一毫毛