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しゆうけう
彼は
行く/\
口の
中で
何遍も
宗教の二
字を
繰り
返した。けれども
其響は
繰り
返す
後からすぐ
消えて
行つた。
苦痛を
薄らげるのは
何の
爲か?
苦痛は
人を
完全に
向はしむるものと
云ふでは
無いか、
又人類が
果して
丸藥や、
水藥で、
其苦痛が
薄らぐものなら、
宗教や、
哲學は
必要が
無くなつたと
棄るに
至らう。
攫んだと
思ふ
烟が、
手を
開けると
何時の
間にか
無くなつてゐる
樣に
宗教とは
果敢ない
文字であつた。
宗教と
關聯して
宗助は
坐禪といふ
記臆を
呼び
起した。
昔し
京都にゐた
時分彼の
級友に
相國寺へ
行つて
坐禪をするものがあつた。
當時彼は
其迂濶を
笑つてゐた。「
今の
世に……」と
思つてゐた。