-
トップ
>
-
かねぐら
もし彫刻を命ぜられることになったら、費用は
金蔵から渡されるであろう。書籍は
篤と取調べ、かつ刻本
売下代金を以て費用を返納すべき
積年賦をも取調べるようにということであった。
呂宋助左衛門の
手代だったのも、
備前宰相の
伽羅を切ったのも、
利休居士の友だちになったのも、
沙室屋の
珊瑚樹を
詐ったのも、伏見の城の
金蔵を破ったのも、八人の
参河侍を斬り倒したのも
聞て彦兵衞大いに
後悔なし
道理こそ佐竹家の
敗軍心に
適はず仕方こそ有るべしと夫より本屋を尋ね
天安記と
云る書物を
借出し隱居の方へ行て咄をするに一向機嫌の
直らぬ樣子なれば彦兵衞も
金庫を
營むが
上に
彼れは
本家とて
世の
用ひも
重かるべく
我とて
信用薄きならねど
彼方に
七分の
益ある
時こゝには
僅かに
三分の
利のみ
我が
家繁榮長久の
策は
彼れ
松澤の
無きにしかず
且つは
娘の
容色世に
勝れたれば
是とても
又一つの
金庫芳之助とのえにし
絶えなば
通り
町の
角地面持參の
聟もなきにはあらじ
一擧兩得とはこれなんめりと
思ふ
心は