ねつ)” の例文
久助君の手が、あやまって相手のわきのしたから、ねつっぽいふところにもぐりこんだとき、兵太郎君はクックッとわらったからである。
久助君の話 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
ねこは、さもむかしのことをおもしたように、周囲しゅういをぐるりと、ねつのためにふらふらするあしつきで、からだをすりつけながらまわりました。
木の上と下の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それもわづかくはからんだ晝顏ひるがほはなに一ぱいりやうそゝいではあわてゝ疾驅しつくしつゝからりとねつしたそらぬぐはれることもるのであるが
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
なるほど、それぢやア、マアたいしたおねつぢやアないおみやくはうは。「みやくはうおほうございます、九でうから一でうでう出越でこくらゐな事で。 ...
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
……おう土地よ燃えたってる土地よ、情熱と無言の土地よ、汝のねつっぽい平和の下に、ローマ軍団のらっぱの鳴り響くのが、予には聞こえる。
はゝは年に一二度づつは上京して、子供の家に五六日寐起ねおきする例になつてゐたんだが、其時は帰る前日ぜんじつからねつだして、全くうごけなくなつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
土器の中には此石錐いしきりにてけたるに相違無き圓錐形のあな有る物有り。すでに錐の用を知る、焉ぞ錐揉きりもみの如き運動うんどうねつを用ゆる事をらざらん。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
そのくる日保名やすなは目がめてみると、昨日きのううけたからだきず一晩ひとばんのうちにひどいねつをもって、はれがっていました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
何を言ッてやがンでえ——と例に依ってクスクス嘲笑しかける者がありましたが、日本左衛門は、それで一笑に付し去ろうとはしないで、なおねつ
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ケンプ博士はくし透明人間とうめいにんげんのきばつな考えに、ただうなずくばかりだった。透明人間のことばはますますねつをおびてきた。
たびたびねつにうかされながら、わたしは寝台ねだいのすそで不安心ふあんしんらしい大きな目をわたしに向けているかの女を見た。
そのは、今更いまさらながら、瞬時しゆんじいへども、こゝろかげが、ねつへないものゝごとく、不意ふいのあやまちで、怪我けがをさしたひと吃驚びつくりするやうに、ぎんふたを、ぱつとつた。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
別府べっぷさんの口調くちょうねつしてきて、そのほおが赤くなるにつれて、星野仁一ほしのじんいちの顔からは、がひいていった。選手せんしゅたちは、みんな、頭を深くたれてしまった。
星野くんの二塁打 (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
その前からすっかり弱っていたきえちゃんは、とうとうひどいねつを出し、もう頭も上がらなくなりました。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
ねつたのとですくなからずよわつ身體からだをドツかとおろすと眼がグラついておもはずのめりさうにした。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
總身そうみさむって、血管中けっくわんぢゅうとほおそろしさに、いのちねつ凍結こゞえさうな! いっみな呼戻よびもどさうか? 乳母うば!……えゝ、乳母うばなんやくつ? おそろしいこの
それで一時もり返したねつも今は又すつかりさめきつて、それは空しくおし入のおくでほこりにまみれてゐる。
れのみ一人のぼせて耳鳴みゝなりやすべき桂次けいじねつははげしけれども、おぬひとふものにてつくられたるやうのひとなれば、まづは上杉うへすぎいゑにやかましき沙汰さたもおこらず
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
虎列拉には三種さんしゅありて、一を亜細亜虎列拉といい、一を欧羅巴虎列拉といい、一を霍乱かくらんという、此病には「バチルレン」というものありて、華氏百度のねつにてす云々。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
が若かりし時水村すゐそんの一農夫のうふ、寒あけてのちかはをそのとりたるさけうばひ、これをくらひてねつになやみ、三日にして死たる事あり、さればたゝりあるといふ口碑かうひせつしゆべからず。
寝転ろんで鏡を見ていると、歪んだ顔が少女むすめのように見えて、体中が妙にねつっぽくなって来る。
放浪記(初出) (新字新仮名) / 林芙美子(著)
其様な場合ばあひには、まぶたのはれぼツたいせいか、層波目ふたかわめ屹度きつとふかきざみ込まれて、長い晴毛まつげしたうるみつ。そしてうちえてゐるねつが眼に現はれて來るのでは無いかと思はせる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
我等は、何とも苦しくて、こころねつすれども肉体にくたいよわく、とてもママの傍にいる気力は無い
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
彼はおのれが与へし男の不幸よりも、そはれぬ女のかなしみよりも、づその娘が意気のさかんなるに感じて、あはれ、世にはかかる切なる恋のもゆる如き誠もあるよ、とかしらねつし胸はとどろくなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ホモイ、お前は少しねつがありはしないか。むぐらをたいへんおどしたそうだな。むぐらのうちでは、もうみんなきちがいのようになっていてるよ。それにこんなにたくさんの
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
うかゞはんとて障子しやうじそとへ參りしをり寢言ねごとなるか夫かあらぬか如此これ/\和君あなたは仰せ有ましたがねつもあらぬに今の御言葉どうも合點がてんが參りませぬ然すれば病氣と仰被おつしやるうそにて途中とちうで何事か有しを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
せみは殻を脱げども、人はおのれをのがれ得ざれば、戦いのねつやまいの熱に中絶なかたえし記憶の糸はそのたいのややえてその心の平生へいぜいかえるとともにまたおのずからかかげ起こされざるを得ざりしなり。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
岩漿がんしよう非常ひじようたかねつ壓力あつりよくとのもときはめて多量たりようみづ含有がんゆうすることが出來できるから、外界がいかいあらはれて鎔岩ようがん多量たりよう蒸氣じようきくのである。この蒸氣じようきひろがるちから火山かざん爆發力ばくはつりよくとなるのである。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
雨よ、この燃える思をひややかに、亂れた胸をたひらかに、このさし伸べたねつの手をすずしいやうにひやせかし。おゝ、ぽつりぽつりやつて來た。……あゝ、さつとひとあめ……おや、もう月の出か。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
いや それほどねつが高いのです だからおとなしくてゐることです
〔譯〕獨立どくりつ自信じしんたふとぶ。ねつえんくのねん、起す可らず。
調子に乗って大分だいぶ勝手なねつを吹いた。小僧にしては少し云い草がえら過ぎるから、多分何かの受け売りだろうと、疑う読者があるかも知れないが、以上は全く正真正銘の己の直覚から出た議論である。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
植物性の異臭いしゆうと、ねつと、くるしみと、……
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ねつやゝ高き日のたよりなさ。
『悲しき玩具』を読む (新字旧仮名) / 伊藤左千夫(著)
ねつあるしたにしみるとき
桜さく島:春のかはたれ (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
らそれから五百匁ひやくめぐれえ軍鷄雜種しやもおとしくゝつて一ぺんつちまつたな、さうしたらねつた」かれにはかこゑひくくしたが、さら以前いぜんかへつて
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あらんかぎりのちからをつくしたにもかかわらず、ちいさな、なんのつみもない子供こどもは、幾日いくにちたかねつのためにくるしめられました。
星の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのこえをおきになると、天子てんしさまはおひきつけになって、もうそれからは一晩ひとばんじゅうひどいおねつが出て、おやすみになることができなくなりました。
(新字新仮名) / 楠山正雄(著)
木と木の摩擦は木質より細粉さいふんを生じ、此細粉はねつの爲にげてホクチの用を爲す。是實驗じつけんに因りて知るを得べし。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
ねつがモウ少しかないでは直りますまいよ。「御心配なさいますな、明日みやうにちはキツと御発カンでございます。 ...
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
ひどいねつが出て、はげしい寒けを感じた。わたしのむねの中は、小さなジョリクールがあのばん木の上でごしたとき受けたと同様、きつくやうな熱気ねっきを感じた。
姿見すがたみおもかげ一重ひとへ花瓣はなびら薄紅うすくれなゐに、おさへたるしろくかさなりく、蘭湯らんたうひらきたる冬牡丹ふゆぼたんしべきざめるはぞ。文字もじ金色こんじきかゞやくまゝに、くちかわまたみゝねつす。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其夜そのよからぼくねつ今日けふ三日みつかになるが快然はつきりしない。やまのぼつて風邪かぜいたのであらう。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ねつがあるとわるいから、一にちやすんだらと御米およね心配しんぱいてにして、れいとほ電車でんしやつた宗助そうすけは、かぜおとくるまおとなかくびちゞめて、たゞひとところ見詰みつめてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
たとへばあき温泉塲おんせんばしづかな更けなどに、このもしいあひ手と勝負せうふねつ中しながら、相當そうたううでが出來なければ冴※ないところのあのたまひゞきを持はちよつと何ともいへない。
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
れいの、老女修道者ろうじょイルマンでございますが、たッたいま、何者なにものかにしたたかこしをうたれてねつをはっし、ひどくうめいておりますので、吹針ふきばり試合しあいにはでられぬようすでござります」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
となりてら觀音樣くわんをんさま御手おんてひざ柔和にうわの御さうこれもめるがごとく、わかいさかりのねつといふものにあはれみたまへば、此處こゝなるひややかのおぬひくぼをほうにうかべてことはならぬか
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
彼自身は世界の転向する角のところにすわって、後方には闇夜の悲壮な光輝を、前方には若々しい希望の微笑ほほえみ、清新なねつっぽいあけぼの漠然ばくぜんたる美しさを、楽しげにうちながめた。
地寒ちかんのよわきとつよきとによりてこほりあつきうすきとのごとし。天に温冷熱をんれいねつの三さいあるは、人のはだへあたゝかにくひやゝ臓腑ざうふねつするとおな道理だうり也。気中きちゆう万物ばんぶつ生育せいいくこと/″\く天地の気格きかくしたがふゆゑ也。
置てもどりしにぞお花は早速さつそくせんじてのまするに其夜の明方頃になり友次郎は夥多敷おびたゞしくはきけるが夫より大いにねつさめすや/\とねむる樣子なるにぞお花は少しは安堵あんどせしに其翌日より友次郎の右の足に大きさ茶碗ちやわん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)