𩛰あさ)” の例文
歴としたうちの飼い犬でありながら、品性の甚だ下劣な奴等で、毎日々々朝から晩まで近所の掃溜はきだめ𩛰あさり歩き二度の食事のほか間食かんしょくばかりむさぼっている。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
其の赤児あかごをば捨児すてごのやうに砂の上に投出してゐると、其のへんにはせた鶏が落ちこぼれた餌をも𩛰あさりつくして、馬の尻から馬糞ばふんの落ちるのを待つてゐる。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
たれにか棄てられけむ、一頭いつとう流浪るらうの犬の、予が入塾の初より、数々しば/\庭前ていぜん入来いりきたり、そこはかと𩛰あさるあり。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ときどき扇のような片羽を開いてくちばしで羽虫でも𩛰あさるのであろう、ふいに水の上の白い影が冴えて揺れた。
みずうみ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
四羽の鶏が屋敷中を𩛰あさって歩く。薄井の方の茄子畠なすばたけに侵入して、爺さんに追われて帰ることもある。牝鶏同志で喧嘩けんかをするので、別当が強い奴をつかまえて伏籠に伏せて置く。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
にはかにも飢ゑてものほしげなるに、彼此をちこち六六𩛰あさり得ずして狂ひゆくほどに、たちまち文四が釣を垂るるにあふ。其のはなはだかんばし。心又六七がみいましめを守りて思ふ。我はほとけの御弟子なり。
色あるきぬ唐松からまつみどり下蔭したかげあやを成して、秋高き清遠の空はその後にき、四脚よつあしの雪見燈籠を小楯こだてに裾のあたり寒咲躑躅かんざきつつじしげみに隠れて、近きに二羽のみぎは𩛰あさるなど、むしろ画にこそ写さまほしきを
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
數千の鴿はとは廣こうぢを飛びかひて、甃石いしだたみの上に𩛰あされり。
荷車の後押しをする車力しゃりきの女房は男と同じような身仕度をして立ち働き、その赤児あかごをば捨児すてごのように砂の上に投出していると、そのへんにはせた鶏が落ちこぼれた餌をも𩛰あさりつくして