飛沫とばしり)” の例文
奥さんの小言の飛沫とばしり年長うえのお嬢さんにまで飛んで行った。お嬢さんは初々ういういしい頬をあからめて、客や父親のところへ茶を運んで来た。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
だんだん山間の溪流に沿うて降って行きますと、奔流ほんりゅうの岩に激して流るるその飛沫とばしりが足もとに打付けるという実に愉快なる光景であります。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
吾等われらおどろいて立上たちあがる、途端とたんもあらせず! ひゞきたちま海上かいじやうあたつて、天軸てんじく一時いちじくだぶがごとく、一陣いちぢん潮風ていふうなみ飛沫とばしりともに、サツと室内しつない吹付ふきつけた。
四、五人の女給は一度に声を揚げて椅子から飛び退き、長いたもとをかかえるばかりか、テーブルからゆかしたた飛沫とばしりをよける用心にとすそまでつまみ上げるものもある。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
興に乗じた気焔きえん飛沫とばしりえらそうな事をいっても、根が細心周密な神経質の二葉亭には勝手に原文を抜かしたり変えたりするような不誠実な所為まねは決して出来ないので
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「お蔭で傷は浅いです。可哀さうに、あれは大層親思ひですから、あんな飛沫とばしりを喰ふのです。」
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
わしも詰まらない。馬鹿々々しい競争の飛沫とばしりを浴びて、不機嫌な顔をされるんだから」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
万の流れになり、飛沫とばしり
万の流になり、飛沫とばしり
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「おかげで傷は浅いです。可哀かわいそうに、あれは大層親思いですから、あんな飛沫とばしりを喰うのです。」
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
この兄は、充実した身体からだの置場所に困るという風で、思わず言葉に力を入れた。その飛沫とばしりが正太にまで及んで行った。兜町かぶとちょうもうけようなどとは、生意気な、という語気で話した。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
もう一つは佐伯君が受けた飛沫とばしりだった。或日、谷君が教室で赤羽君と出会いがしら
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
こういう気象の先生だから、演説でもする場合には、ややもするとその飛沫とばしりが医者仲間なぞにまで飛んで行く。細心な理学士は又それを心配して私のところへ相談に来るという風だ。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)