飛散とびち)” の例文
竹構たけがまえの中は殊更に、吹込む雪の上を無惨に飛散とびちとりの羽ばかりが、一点二点、真赤な血のしたたりさえ認められた。
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
氷山へうざんくだけてたま飛散とびちごとく、すでにうしなつて、四途路筋斗しどろもどろ海賊船かいぞくせんに、命中あたるも/\、本艦々尾ほんかんかんびの八インチ速射砲そくしやほうは、たちま一隻いつせき撃沈げきちんし、同時どうじ打出うちだす十二サンチほう榴彈りうだん
あの声あの飛び方の奇抜きばつなるは別として、その羽毛の彩色に至っては、確かに等倫とうりんを絶している。これは疑う所もなく熱帯樹林の天然から、小さき一断片の飛散とびちってここにあるものである。
おお沢山な赤蜻蛉あかとんぼじゃ、このちらちらむらむらと飛散とびちる処へ薄日うすびすのが、……あれから見ると、近間ちかまではあるが、もみじに雨の降るように、こううっすりと光ってな、夕日に時雨しぐれが来た風情ふぜいじゃ。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はしらのやうにつたとおもふと、ちやうどおほきさにえました、つめいなづまのやうなてのひらひらいて、をんなたちのかみうへ仙人せんにんあし釣上つりあげた、とますと、天井てんじやうが、ぱつと飛散とびちつて、あとはたゞ黒雲くろくもなか
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)