顕微鏡けんびきょう)” の例文
旧字:顯微鏡
皮膚病にかかればこそ皮膚の研究が必要になる。病気も無いのに汚ないものを顕微鏡けんびきょうながめるのは、事なきに苦しんで肥柄杓こえびしゃくを振り廻すと一般である。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ピストルの内部を開いて螺旋溝らせんこう寸法ディメンション顕微鏡けんびきょうで測ってみると、ねて押収して置いた被害者達の体内をくぐった弾丸の溝跡こうせきの寸法と完全に一致した。
省線電車の射撃手 (新字新仮名) / 海野十三(著)
普通ふつう中学校などにそなけてある顕微鏡けんびきょうは、拡大度かくだいどが六百ばい乃至ないし八百倍ぐらいまでですから、ちょうはね鱗片りんぺん馬鈴薯ばれいしょ澱粉粒でんぷんりゅうなどはじつにはっきり見えますが
手紙 三 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
顕微鏡けんびきょうの見かた、化学の実験など、探偵にひつような法医学の知恵を、すこしずつおそわっているのでした。
夜光人間 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
目金めがね屋の店の飾り窓。近眼鏡きんがんきょう遠眼鏡えんがんきょう双眼鏡そうがんきょう廓大鏡かくだいきょう顕微鏡けんびきょう塵除ちりよ目金めがねなどの並んだ中に西洋人の人形にんぎょうの首が一つ、目金をかけて頬笑ほほえんでいる。その窓の前にたたずんだ少年の後姿うしろすがた
浅草公園:或シナリオ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
お前たちはそれがみんな水玉だと考えるだろう。そうじゃない、みんな小さな小さな氷のかけらなんだよ、顕微鏡けんびきょうで見たらもういくらすきとおってとがっているか知れやしない。
風野又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
はるかな能登のと半島の森林が、喰違くいちがった大気の変形レンズを通して、すぐ目の前の大空に、焦点のよく合わぬ顕微鏡けんびきょうの下の黒い虫みたいに、曖昧あいまいに、しかも馬鹿馬鹿しく拡大されて
押絵と旅する男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それでなければ卒然と春のなかに消え失せて、これまでの四大しだいが、今頃は目に見えぬ霊氛れいふんとなって、広い天地の間に、顕微鏡けんびきょうの力をるとも、名残なごりとどめぬようになったのであろう。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「いいえ、まるでちらばってますよ、それに研究室兼用ですからね、あっちのすみには顕微鏡けんびきょうこっちにはロンドンタイムス、大理石のシィザアがころがったりまるっきりごったごたです。」
土神ときつね (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
津田は黙って点頭うなずいた。彼のそばには南側の窓下にえられた洋卓テーブルの上に一台の顕微鏡けんびきょうが載っていた。医者と懇意な彼は先刻さっき診察所へ這入はいった時、物珍らしさに、それをのぞかせてもらったのである。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
また、普通ふつう顕微鏡けんびきょうで見えないほどちいさなものでも、ある装置そうちくわえれば
手紙 三 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)