しづま)” の例文
旧字:
あゝ風情ふぜいとも、甘味おいしさうとも——その乗出のりだして、銀杏返ゐてふがへし影法師かげばふし一寸ちよつとしづまつたのをばうとした。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
高柳派の壮士、六七人、しきりに妨害を試みようとしたが、しまひには其もしづまつて、水を打つたやうに成つた。悲壮な熱情と深刻な思想とは蓮太郎の演説を通しての著しい特色であつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
さてかれが油滓あぶらかすなどをちらしおき、かの穴にも入れおく、さて夜ふけ人しづまりたるころ狐こゝにきたり、ちらしおきたるをくらつくし、なほたらざればかならずかの穴にあるをくらはんとし
見廻す街の光景は初夜の頃入場したる時のにぎやかさには引変ひきかへて、しづまり行くよるの影深く四辺あたりめたれば、身は忽然見も知らぬ街頭に迷出まよひいでたるが如く、朧気おぼろげなる不安と、それに伴ふ好奇の念に誘はれて
夜あるき (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ぢき揉消もみけせば人はしづまるとともに、彼もまたさきの如し。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
と一心不乱しんふらんさツいてかぜみんなみいたが、たちましづまかへつた、夫婦ふうふねやもひツそりした。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)