青田あおた)” の例文
青田あおたうえを、わたるかぜが、ひかりなみをつくり、さっきの、きれいなひとのまぼろしがうかぶとおもうと、はかなく、きえてしまいました。
風七題 (新字新仮名) / 小川未明(著)
はたけ一帯、真桑瓜が名産で、この水あるがためか、巨石おおいしの瓜は銀色だと言う……瓜畠がずッと続いて、やがて蓮池はすいけになる……それからは皆青田あおたで。
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二人はあたりを眺めながら、青田あおたあいだを歩いて行った。するとたちまち道ばたに農夫の子らしい童児が一人、まるい石を枕にしたまま、すやすや寝ているのを発見した。
金将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
左右は青田あおたである。みちは細い。さぎの影が時々やみに差す。
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
処々ところどころ、山の尾が樹の根のようにあつまって、広々とした青田あおたかかえたところもあり、炭焼小屋を包んだ処もございます。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
紳士しんしは、めったにひととおらない、青田あおたなか細道ほそみちあるいて、みぎたり、ひだりたりしながら、ときどき、まっては、くつのさき石塊いしころころがしたりしていました。
銀河の下の町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ある時石川郡いしかわごおり市川いちかわ村の青田あおた丹頂たんちょうの鶴くだれるよし、御鳥見役おとりみやくより御鷹部屋おたかべや注進になり、若年寄わかどしよりより直接言上ごんじょうに及びければ、上様うえさまには御満悦ごまんえつ思召おぼしめされ、翌朝こく御供揃おともぞろい相済み
三右衛門の罪 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
門を出ると、右左、二畝ふたうねばかり慰みに植えた青田あおたがあって、向う正面の畦中あぜなかに、琴弾松ことひきまつというのがある。
星あかり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
蟻をならべた並木の筋に……蛙のごとき青田あおたの上に……かなたこなた同じ雲の峰四つ五つ、近いのは城のやぐら、遠きは狼煙のろし余波なごりに似て、ここにある身は紙鳶たこに乗って、雲のかけはし渡る心地す。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)