雪頽なだれ)” の例文
わがすむ魚沼郡うをぬまこほりの内にて雪頽なだれため非命ひめいをなしたる事、其村の人のはなしをこゝにしるす。しかれども人の不祥ふしやうなれば人名じんめいつまびらかにせず。
一人発奮はずみをくって、のめりかかったので、雪頽なだれを打ったが、それも、赤ら顔の手もまじって、三四人大革鞄にとりかかった。
革鞄の怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
或人あるひととふていはく、雪のかたち六出むつかどなるはまえべんありてつまびらか也。雪頽なだれは雪のかたまりならん、くだけたるかたち雪の六出むつかどなる本形ほんけいをうしなひて方形かどだつはいかん。
これならうらやまから雪頽なだれてもびくともせぬ。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
山にちかき処に須川すかは村(川によりて名づく)菖蒲しやうぶ村といふあり。此ひし山、毎年二月に入り夜中にかぎりて雪頽なだれあり、其ひゞき一二里にきこゆ。
雪国にてふるひおそるゝ物は、冬の○雪吹ふゞき○ホウラ、春の雪頽なだれなり。此奇状きじやう奇事きじすでに初編にもいへり、されど一奇談いつきだんを聞たるゆゑこゝにしるして暖国だんこく話柄はなしのたねとす。
雪頽なだれといふ事初編しよへんにもくはしくしるしたるごとく、山につもりたる雪二丈にもあまるが、春の陽気やうきしたよりむし自然しぜんくだおつる事大磐石だいばんじやくまろばしおとすが如し。
弥左ヱ門が雪頽なだれに熊を得たるは金一釜きんいつふ掘得ほりえたる孝子かうしにもすべく、年頃としごろ孝心かうしんてんのあはれみ玉ひしならんと人々しやうしけりと友人いうじん谷鴬翁こくあうをうがかたりき。