とき)” の例文
「あツ、」とまたはげしい婦人おんなの悲鳴、此のときには、其のもがくにつれて、はんの木のこずえの絶えず動いたのさへんだので。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
召連れ領主役場の腰掛こしかけへ參りしとき九助は爪印つめいんすみに成とて腰掛のかこひの中に居し故實は下役人へ少の贈物おくりものを致し其人の心入にて腰掛こしかけの小かげで此世の暇乞いとまごひ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
維新のとき人にすぐれたる勲功のありし由は。門に打ちたる標札に。従三位じゅさんみ子爵なにがしと昨日今日墨黒すみぐろに書きたるにても知りぬべし。さればその昔し尊王を唱え攘夷じょういを説き。四方に奔走せし折は。
藪の鶯 (新字新仮名) / 三宅花圃(著)
介抱かいはうの中十歳のとき勾引かどはかされ既に何國いづくへか連られべき處九助儀江戸表出府しゆつふの節其場所を通り合せ此難儀なんぎを救ひつかはし其夜節方へ一宿仕つり艱難かんなんていと孝心の程を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
きはめ其夜兩國橋へ行きすでに身をなげんとたりしとき小提灯こちやうちんを持ちたる男馳寄かけよつてヤレまたれよと吉之助をいだとゞめるに否々いな/\是非死なねばならぬ事あり此所ここはなしてと云ふを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)