釧路くしろ)” の例文
その一つの皺の底を線が縫って、こっちに向ってだんだん上ってきている。釧路くしろの方へ続いている鉄道だった。十勝川も見える。
人を殺す犬 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
駒が岳の噴火も其後の事である。然し汽車は釧路くしろまで通うても、駒が岳は噴火しても、大沼其ものは舊に仍つて晴々した而して寂かな眺である。
熊の足跡 (旧字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
釧路くしろ白糠しらぬか町にある庶路しょろ川から阿寒あかんに抜ける穴があると古くから伝えられ、オマンルパロ(あの世へ行く道の入口)ではないかと言われている。
釧路くしろへ着いたのが八時頃で、驛を出ると、外國の港へでも降りたやうに潮霧がすがたちこめてゐた。雨と潮霧で私のメガネはたちまちくもつてしまふ。
その時刻までに、わが青軍の主力は、前夜ぜんや魚雷ぎょらいに見舞われて速力が半分にちた元の旗艦きかん釧路くしろ』を掩護えんごして、うまく逃げ落ちねばならなかった。
恐しき通夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「もうき退院が出來るが、大將は遊んでばかりをつて、僕にまかせ切りで困る。今、釧路くしろへ行つてるが、あすぐらゐここへ來る筈だ、——會ひ給へ。」
泡鳴五部作:04 断橋 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
その反抗はつねに私に不利な結果をもたらした。郷里くにから函館はこだてへ、函館から札幌さっぽろへ、札幌から小樽おたるへ、小樽から釧路くしろへ——私はそういう風に食をもとめて流れ歩いた。
弓町より (新字新仮名) / 石川啄木(著)
北海道の釧路くしろで牧場を経営してゐる子供のない叔父の家にやられてゐたが、其の頃女学生だつた姉は、よくセンチメンタルな手紙をよこしては孤独な私を泣かせた。
イボタの虫 (新字旧仮名) / 中戸川吉二(著)
ふりかえって東を見れば、㓐別谷りくんべつだにしきるヱンベツの山々をまえて、釧路くしろ雄阿寒おあかん雌阿寒めあかんが、一はたけのこのよう、他は菅笠すげがさのようななりをして濃碧の色くっきりと秋空に聳えて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
自分が旅中に見てきたのは、白糠しらぬか以北の砂山から、釧路くしろの港の後ろの岡などであった。今は開けてあのころの面影もないかしらぬが、寒地に行くほどたけが高くなるのではないかと思われた。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そりゃ刃物け、棒切一本持たいでも、北海道釧路くしろの荒土をねた腕だで、このこぶし一つでな、どたまア胴へ滅込めりこまそうと、……ひょいと抱上げて、ドブンと川にめる事の造作ないも知ったれども
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
昭和八年八月二十三日 釧路くしろ港。此夜、釧路港、近江屋泊。
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
「今日は主人が釧路くしろに行ったもんで……」
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
此事は余自らも釧路くしろに於て實見じつけんせり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
「僅かの旅費を送つて呉れたら、釧路くしろまで行つて來られたのに。」義雄が責める樣に云ふと、天聲は
泡鳴五部作:04 断橋 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
旭川に二夜ふたよ寢て、九月二十三日の朝釧路くしろへ向ふ。釧路の方へは全くの生路である。
熊の足跡 (旧字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
旭川に二夜ふたよ寝て、九月二十三日の朝釧路くしろへ向う。釧路の方へは全くの生路である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
北海道北見きたみ釧路くしろ地方で。
釧路くしろの海の冬の月かな
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
そこへ義雄が行き合はせたので、朝顏の話から始まつて、北劍が釧路くしろに經營させてある牧場のことや放牧馬はうぼくばのことに移り、それから、義雄の話し出した牧草のことになつた。
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
北太平洋の波の音の淋しい釧路くしろ白糠しらぬか驛で下りて、宿の亭主を頼み村役場に往つて茶路ちやろに住むと云ふM氏の在否を調べて貰ふと、先には居たが、今は居ない、行方は一切分からぬと云ふ。
熊の足跡 (旧字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
然し汽車は釧路くしろまで通うても、駒が岳は噴火しても、大沼其ものはきゅうって晴々はればれした而してしずかな眺である。時は九月の十四日、然し沼のあたりのイタヤかえではそろ/\めかけて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そして、社として僅かに這入つて來た金を社員の出張旅費に分配して、次號の材料並びに廣告を取る爲め、小樽、旭川、帶廣、釧路くしろ室蘭むろらん地方へ、社員を分派したところだ。
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
その間に、ガス深い釧路くしろまで行つて見たくなつた。その旅費を送れといふ手紙をメール社の天聲へ出し、二日ばかり伏古ふしこ音更ねとふけ兩村に行つて、そこのアイノ部落とアイノ傳説等を研究した。
泡鳴五部作:04 断橋 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
餘り人を馬鹿にする樣な昇の態度を反省させたので——帶廣から釧路くしろ行きの旅費を電報で請求したのも、天聲がそれ位の請求はあとから出來る餘地を殘した證言をしてあつたからだと云ふことを
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)