“遺(や)” の例文
「相變(あひかは)らず精(せい)が出(で)ますね」と云(い)つたなり、長火鉢(ながひばち)の前(まへ)へ胡坐(あぐら)をかいた。嫂(あによめ)は裁縫(しごと)を隅(すみ)の方(はう)へ押(お)し遺(や)つて置(お)いて、小六(ころく)の向(むかふ)へ來(き)て、一寸(ちよつと)鐵瓶(てつびん)を卸(おろ)して炭(すみ)を繼(つ)ぎ始(はじ)めた。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「そら/\」といひながら、手(て)を出(だ)して待(ま)つて居(ゐ)る與吉(よきち)へ遺(や)つた。おつぎは砂糖(さたう)の附(つ)いた自分(じぶん)の手(て)を嘗(な)めた。與吉(よきち)は其(その)砂糖(さたう)をお袋(ふくろ)の懷(ふところ)へこぼしながら危(あぶ)な相(さう)につまんでは口(くち)へ入(い)れる。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
『今(いま)に出(で)るよ』と遺(や)ると『今(いま)に出(で)てから始(はし)めやう』と反(そ)らす。