賓客ひんきゃく)” の例文
賓客ひんきゃくあつかいなどして、まことに言語道断である。もうすこし中央の府たるものは、他州の外臣に対して、戒心を厳にせねばなりませんな
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
狩野介は、情理に厚い武士であったから、罪人としてよりも、むしろ賓客ひんきゃくをもてなすように手厚くもてなし、旅の労をいたわるのであった。
「そうあろう」とまた打ち案じたが、「大切の賓客ひんきゃくを驚かせて御嶽冠者義理が立たぬ。これから参って見舞うことにしようぞ」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
稜嶒りょうそうたる岩山のしたの町ムスカットのその夜は、イラン、エジプトご新婚の賓客ひんきゃくをそっくりひき受け、ヨーロッパ社交界に鳴るきらびやかな連中が
人外魔境:10 地軸二万哩 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「二人とも今より、奉行所の大切な賓客ひんきゃくじゃ。われらがお供申しあげるにより、これより用意の駕籠かごに召されて——」
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
この賓客ひんきゃく用浴場は、戦争前にC殿下が登山に来られるというので、叔父は大いに感激して新築した物です。
浴槽 (新字新仮名) / 大坪砂男(著)
カピューレット長者ちゃうじゃさきに、ヂュリエットおよ同族どうぞくもの多勢おほぜいぱうよりで、他方たはうよりきた賓客ひんきゃく男女なんにょおよびロミオ、マーキューシオー假裝者かさうしゃの一ぐんむかふる。
子曰く、求は千室の邑、百乗の家、これが宰たらしむべし、其の仁を知らざるなり。赤は何如。子曰く、赤は束帯して朝に立ち、賓客ひんきゃくものいわしむべし、其の仁を知らざるなり。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
○ それよりも珍しいのは、初春の歳徳棚としとくだなでもすでに認められたように、今でも一隅にいっさい精霊もしくは無縁仏の座を設けて、招かざる賓客ひんきゃくに供物をしていることである。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
降将李陵は一つの穹盧きゅうろと数十人の侍者じしゃとを与えられ賓客ひんきゃくの礼をもってぐうせられた。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
ルゾン号の賓客ひんきゃくとなったのである。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ここ河北の首府、冀州城きしゅうじょうのうちに身をよせてから、賓客ひんきゃくの礼遇をうけて、なに不自由もなさそうだが、心は日夜楽しまない容子に見える。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いわばお前は賓客ひんきゃくだ! 少し悪くいうと幇間ほうかんだ! アッハハハ怒ってはいけない! しかし実際学者というものは、いついかなる時代でも、ある権力者に使用される。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それが、当時の浜ッ子には、いかにも颯爽さっそうと見え、開化の賓客ひんきゃくらしく見え、えらく見え、文明人らしく見えた。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
纐纈城では捕虜のことを「大事な賓客ひんきゃく」と呼んでいた。その大事な賓客達の部屋は、広いそして無限に長い、掃除の行き届いた廊下の両側に、ほとんど無尽蔵に並んでいた。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
久しく人らしい人に会わないと嘆じていた彼は、この賓客ひんきゃくに、心からの歓びを寄せたが、それにしても、藤孝の来訪は、いったい何事かしらと、心のうちで疑った。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秋山要介を賓客ひんきゃくとし、森田屋の手下の海賊どもが、酒宴をひらいているのであった。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
夫婦の者は、時ならぬ賓客ひんきゃくを迎えたように、ちりを掃き、炉ぶちを拭いて、薪を新たにくべ足した。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その際余儀ないご懇望により鉱山かなやまおさとしてこの地に止どまり、殿に臣事しているとは云え、いわば賓客ひんきゃくの身分でござるに、お手討ちなんど遊ばすが最後、伊予との同盟忽ちに破れ
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
漕ぎすすむことややしばらく、近づく一口の江の蔭から、たちまち銅鑼どら鼓笛こてきの音がわき起った。見れば、一陣の物見舟である。賓客ひんきゃくの礼をとって、歓迎のがくを奏したものか。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「大事な賓客ひんきゃくのお一人に」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
時に、建安の四年八月朔日、朝賀の酒宴は、禁裡きんりの省台にひらかれた。曹操ももちろん、参内し、雲上の諸卿、朝門の百官、さては相府の諸大将など、綺羅星のごとく賓客ひんきゃくの座につらなっていた。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
賓客ひんきゃく達も寝たらしい。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
といって、迎うるに賓客ひんきゃくの礼をとり、語るに上座を譲ってなぐさめた。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さあ、どうしたのか?」と、気が気でなく、朝野の賓客ひんきゃくを集めた招宴も一こうえず、さい大臣の不機嫌はなはだしいうちに終っていたが、やがてその夜も深更のこと。北京ほっけいからの早飛脚だった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何事だ、このほこりは。この不始末は。かような物ぐさい所で賓客ひんきゃくの膳を
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よほどの賓客ひんきゃくでもなければ、こういう鄭重ていちょうな礼はらない。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夜をきら賓客ひんきゃくがあるので正午十二時からの宴会であった。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)