)” の例文
夫人の姿像のうちには、胸ややあらわに、あかんぼのお釈迦様をいだかるるのがあるから、——はばかりつつも謹んでおう。
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
前にも既にうごとく、この人形は亡き母として姉妹あねいもとが慕い斉眉かしずく物なれば、宇宙の鬼神感動して、仮に上﨟の口をりかかる怪語を放つらんと覚えず全身粟生あわだてり。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
くちはなまゆ如何いかで見分けむ、たゞ、丸顔の真白ましろき輪郭ぬつとでしと覚えしまで、予が絶叫せる声はきこえで婦人がことばは耳に入りぬ、「こや人になかれ、わらは此処こゝにあることを」
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
べとりと一面青苔あおごけに成つて、欠釣瓶かけつるべ一具いちぐ、さゝくれつた朽目くちめに、おおきく生えて、ねずみに黄を帯びた、手に余るばかりのきのこが一本。其のかさ既に落ちたり、とあつて、わきにものこそあれとふ。
雨ばけ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ほぼその幼馴染おさななじみとでもいッつべき様子を知って、他人には、堅く口を封ずるだけ、お夏のために、天に代りて、大いに述懐せんとして、続けてなおおうとするのを、お夏はかろく手真似で留めた。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
然れどもの面の醜なるを恥ぢずして、かへつてこれを誇る者、渠等は男性を蔑視するなり、す、常に芸娼妓矢場女等教育なき美人をのゝしる処の、教育ある醜面の淑女を呵す。——如斯かくのごとくふものあり。
醜婦を呵す (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)