しつら)” の例文
官邸の玄関にしつらえられた桟敷の上に、モナコやモロッロの王様と並んで、何時の年の巴里祭に見ても、常に悒然いうぜんたる面持で佇んでいる
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
聖壇の前には半円形の演奏台がしつらえてあって、そこに、ドミニク僧団の黒と白の服装をした、四人の楽人が無我恍惚の境に入っていた。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
木蔭に床几しょうぎしつらえさせると、そこらの木から木へ幕を掲げさせ、その中で行儀悪く具足のを解いていた。そして養子の権六勝敏かつとしへ背を向けて
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その頃寮の中にしつらえられた座敷牢のような太い格子の内側で、毎日毎日温和おとなしく寝ていた幼童ようどう——といっても生きていれば今では妾と同じように成人している筈だ——のことだった。
三人の双生児 (新字新仮名) / 海野十三(著)
お、冷たい、冷たい、硬直な、怖ろしい死よ、ここに汝の祭壇をしつらえよ。そして、汝の命令のままになるような、さまざまの恐怖をもてその祭壇を装飾せよ。こは汝の領国なればなり。
総桐そうぎり箪笥たんすが三さおめ込みになっており、押入の鴨居かもいの上にも余地のないまでに袋戸棚ふくろとだなしつらわれ、階下したの抱えたちの寝起きする狭苦しさとは打って変わって住み心地ごこちよく工夫されてあった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
案内されるままについて行くと、その藁葺の農家は、なかはすっかり洋風に造りかえられてあって、椅子やテーブルがしつらえてある。ちょっと地方の新しがり屋——といったような感じの部屋だった。
火星の魔術師 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
ところが、その結果、理智の秤量しょうりょうが反対になってしまって、かえってこっちの方が、犯人のしつらえた秤皿さらの上に載せられてしまったのだよ。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
すでに昨夜のうち、白木の首台をしつらえさせて、自分の幕舎のうちにまつるがごとくえさせておく始末であった。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人目を避け他聞をはばかって、奥まった片隅に会議の席をしつらえ、コン吉とタヌが待ち構えていると、ガイヤアルを先登にして三人の山案内ギイドが、威風堂々舳艫じくろふくんで乗り込んで来た。
ですから、外に出たと思って中に入ろうとし、紙帳の垂れをまくって一足膝行いざると、今度は反対に外へ出てしまうのですが、その眼の前に、一つのあなしつらえてあるのです。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「こよいは、ここに置け。なおまた、白木の首台をしつらえさせて、ていねいにいたしておけよ」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
十四郎兄弟は、陥穽おとしあなを秘かにしつらえて置いて、猟人も及ばぬ豊猟を常に占めていたのである。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
一室には、又太郎のための上座がしつらえられていた。代官の松永経家は下座に平伏して。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、まず彼がしつらえた、狂言の世界を語り終ってから、問題を伸子の動作に移した。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
と、いかめしい辞儀などを略して、小姓のしつらえた敷物へ、武将らしくあぐらをくみ
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すでに酒宴のしつらえができている。衆の歓語、満堂の和気。ぜひなく盧俊儀ろしゅんぎも杯にかこまれた。さてまた、次の日も宴だった。馬、羊をほふり、山菜の珍、水産の佳味かみ、心入れでない物はない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「——弁ノ殿、こうお出でください。ほかに室のしつらえが出来申したゆえ」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「御宿営は、そこの桜井寺にしつらえておきました。まずはおくつろぎを」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ごろうじませ。あれにお船座ふなざしつらえて、お待ちしおりますところで」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
くに、お席もお膳部も、あれにしつらえてござります」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あちらへしつらえておきました」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)