親心おやごころ)” の例文
のみねといと信實まめやか看病みとりなせども今ははや臨終いまはの近く見えければ夫婦ふうふ親子の別れのかなしさ同じ涙にふししばおこる日もなき燒野やけの雉子きゞす孤子みなしごになる稚兒をさなごよりすてゆく親心おやごころおもまくら
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そうかといって他に相当な生活の道を求める手段を講ずる気振けぶりもなかったから、一図いちずに我が子の出世に希望を繋ぐ親心おやごころからは歯痒はがゆくも思いあきれもして不満たらざるを得なかった。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
おれは道夫をよろこばせ、つ愉快に勉強させてやろうと思って、これを買って来たんだ。これ一名いちめい親心おやごころのレコードという。道夫、さあ、かけてごらん。「算術さんじゅつの歌」というラベルの方だよ。
新学期行進曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
昨日きのふ今日けふ時雨しぐれそらに、田町たまちあねよりたのみの長胴着ながどうぎ出來できたれば、暫時すこしはやかさねさせたき親心おやごころ御苦勞ごくろうでも學校がくかうまへの一寸ちよつとつてつてれまいか、さだめてはなつてようほどに
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
では——まよいでしょう。おそらくそれは親心おやごころ煩悩ぼんのうでしょう。——迷いのきりをへだてて見れば、れ木も花と見え、えんなき他人ひとさまの子供でも、自分の子かと見えてくるのが、人情にんじょうのとうぜん。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)